アンティークレッスンNo9 〜アールデコジュエリーの金属の王様プラチナ〜


もし、アールデコジュエリーのクオリティの高さとジュエリーが本物かフェイクかを知りたかったら、プラチナ製かどうか?とプラチナを示すホールマークが使われているかどうか?は重要なチェックポイントになります。

Cartier circa 1925
カルティエ アールデコプラチナ ブローチ 1925年頃

本来、プラチナは自然に白色で密度が濃く重い金属です。金とは違い大抵は950/1000のピュアな状態で使われます。例えばプラチナのリングの重さは18kの金のリングの重量よりも4割程重いのです。

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イギリスのプラチナのホールマーク 950/1000

プラチナは全ての酸、酸化(金のように)に耐性があり、1775度の熱に耐えます(金は1064度です)。
プラチナは他のどの金属よりも耐久性が強く摩耗しにくい為に、艶や輝き長く保つ事ができます。他のどのような素材もプラチナのように作られたばかりの日の艶や輝きをエレガントに保ち続けることは出来ないでしょう。

そしてさらに素晴らしいのは、ピュアなプラチナの性質は金属アレルギーを起こしにくいので、敏感な肌の人々でもジュエリーを楽しむ事が出来る事です。

プラチナは17世紀のコロンビアで発見されました。しかしこの時代にプラチナはまだジュエリーの素材としては使われません。あまりにも丈夫で加工することが困難だった為です。

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プラチナ製 砂糖入れ 1786年 メトロポリタンミュージアム所蔵

加工の難しかったプラチナですが、1786年にフランスの金細工師、Marc Etienne Janetyが砂糖入れにプラチナを加工する事に成功します。現在この砂糖入れはニューヨークのメトロポリタン美術館に収蔵されています。

1825年にはロシアのウラルでプラチナの炭坑が発見され、100年に渡り、主要な炭坑となりました。
1888年にプラチナはカナダでも発見され、1920年から1950年の間に主要な炭坑になりました。そして、1924年に南アフリカでもプラチナは発見されます。

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カラーゴールドと、貴重な金属プラチナ が使われたジュエリー例  1880年頃

19世紀の間、プラチナは主にピンクゴールド、グリーンゴールド、イエローゴールド等の3カラーゴールドの細工と共に、上記写真で確認できるようなごくごく小さなパーツに使われていました。

19世紀後期より、1920年以前の20世紀初期にかけて、ジュエラーはダイヤモンドを留める銀の変わりにプラチナを使い、金の土台にセットしていました。
何故なら、プラチナは色が変わらなかった為(シルバーは酸化により色が変化します)と、耐久性に優れていたからです。
ヨンカーやホープなどの世界の最も有名なダイヤモンドもプラチナにセットされています。

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フランスのホールマーク  プラチナ 950/1000

1912年の12月、フランスでプラチナを示す新しいホールマークが生まれました、それは 犬の頭の形のホールマークです。1912年12月以前はプラチナには18kの鷲のホールマークが使われていました。
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イギリスのプラチナのホールマーク

そして、イギリスでも上記のような特別なホールマークがプラチナに使われていました。

Cartier 1910

ベルギー女王のダイヤモンドのプラチナ製の冠 カルティエ 1910年

20世紀初期にカルティエは、時代を見据えた芸術的な直感によりオールプラチナでジュエリーを作る事に挑んでいます。

Duke Edward VIII and Duchess Wallis Simpson
ウィンザー公爵、ウィンザー公爵夫人

ウィンザー公爵夫人は、昼はゴールドジュエリー、夜に身に纏うジュエリーは一級品の証プラチナ製のジュエリーのみを選んでいました。

 

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18kのフレンチホールマーク

1930年以降、ジュエラー達は特にプラチナ製のジュエリーの需要の高まりを感じていましたが、プラチナは金の30倍珍しく高価な金属だったのでジュエラー達は低価格のジュエリーにはプラチナの変わりに ホワイトゴールド を使い始めるのです。
金は自然な黄色で、ホワイトゴールドとはイエローゴールドに他の金属を混ぜたものです(大抵は750/1000の金と250/1000のニッケルです)

 

chien + aigle

 

フランスの18kとプラチナの両方のマークが一つのジュエリーに打ち込まれている例

これが使われるのはダイヤモンドに触れる部分がプラチナ、フープがホワイトゴールド等です。

一部のジュエラー達はホワイトゴールドとプラチナを同じジュエリーに使っていました、例えば、指輪のフープにはホワイトゴールド、貴重なダイヤモンドを留める爪にはプラチナを使っていたり、または金とプラチナの色の差を隠すためにロディウムめっきとして表面を覆うこともあります。しかし、ロディウムは使用にともない摩耗してくるので地の金色が少しづつ見えてきます。

Cartier 1949

カルティエ ブローチ プラチナ、ホワイトゴールド、サファイヤ 1949年

1940年以前、最高品質のジュエリーには全てプラチナが使われていましたが、1940年〜1945年の間にはプラチナは戦争に使われ、ジュエリーからはほぼ姿を消します。しかし、カルティエのような有名なジュエラー達は高価なジュエリーにはプラチナ(時にはホワイトゴールドを混ぜていました)を使い続けていたのです。

アールデコジュエリーがプラチナかホワイトゴールドか確実に知るには、ジュエラーもしくはディーラーは特別な酸で金属をチェックする必要があります。

しかしより簡単な方法はホールマークを確認することでしょう。

ホールマークについてもアンティークレッスンでご説明していますので、興味のある方はこちらから是非ご覧下さい。

アンティークレッスンNo7~ホールマークの大切さ 金の品質 年代 産地〜

 

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