マスターピース アッカド円筒印章 〜 生命の源 水神エアの裁き〜


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この大型の大変素晴らしい円筒印章は、遥か紀元前アッカド時代(紀元前2350~2200年)の約4千年前の驚くべき作品です。4.6cmの大きさで巨大な貝の軸から出来ているので手に持つとひんやりと冷たくて重いです。手に取って目をつぶれば心は古代世界へ誘われます。。。。

円筒印章とは何か?

この円筒印章は古代世界の粘度板にくさび形文字が刻まれていた頃に、サインとして、所有の印として、物に封をする役割、宗教上の理由等で使われていました。粘度板に効率よく大きな印を記すには幅広の円筒印章を転がす事が都合が良かった為です。
その後のパピルスや羊皮紙の普及に伴い粘度板が姿を消すようになってから、円筒印章の変わりに、より使いやすい小さなスタンプ型の印章がより多く使われ、円筒印章は姿を消していきます。限られた期間に使用された印鑑なのです。

ではこの印章を古代人のように実際にコロコロ粘度に転がしてみましょう。

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5人の人物が浮かび上がりました、約4千年前の古代人が何を表したのか?とても好奇心を刺激されますね。

円筒印章の模様については各国の専門家による円筒印章研究で明らかになってきています。まずは、ルーブル美術館所蔵の円筒印章を見てみましょう。

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ルーブル美術館の円筒印章のセクションには数百の印章が展示されています。
これは今回ご紹介した円筒印章と同じく大変素晴らしい大型の円筒印章で、マスターピースといえるでしょう。
マスターピースとは美術館に所蔵されているミュージアムピースの中でも、資料としての価値だけではない美術的にも圧倒的に優れた作品の事を指します。円筒印章は大抵は小型だったり細長かったりする場合が殆どなので、大型の作品は稀です。

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これはごく一例ですが、このように細長いタイプや小さいタイプが大半です。
上の細長い作品がミュージアムピース、下の大きな作品がマスターピース、ということになります。

フランスから海を挟んでイギリスのブリティッシュミュージアムにも円筒印章が収蔵されていて、今回ご紹介している物と同じ題材の円筒印章があります。

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この作品です。

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粘度に押した画像拡大。

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ギャラリーソレイユの作品とブリティッシュミュージアムの作品が一体どんな場面を伝えているのか?を話したいと思います。

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この物語はアッカド・シュメール時代(紀元前2350~2200年)のバビロニアの神話です。

雷鳥神アンズーは主神である空神エンリルに仕え、神々の神殿を守護していました。雷鳥神アンズーは獅子の頭と鷲の体、そして雷の力を持つ強力な神でした。

空神エンリルは人々の運命を決定し変えることのできる 運命の書板 を持っていました。

雷鳥神アンズーは空神エンリルに仕えているうちに、神々の王になりたいという野望を持ち始め、空神エンリルが水で体を清めている間に、運命の書板を盗みます。

雷鳥神アンズーは強力な力を持っていた為に、運命の書板奪回は難しい状況でした。

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唯一、戦の神ニヌルタ(又はマルドゥク神)が雷鳥神アンズーに挑み、運命の書板を取り返し雷の翼を折る事に成功しました。

☆ここから先の話が円筒印章に刻まれています☆

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戦の神ニヌルタは雷鳥神アンズーを神の法廷で裁くために、雷鳥神アンズーをつれて生命の源の水神エアの元を訪れました。

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それでは細かくこの円筒印章を解説したいと思います。

左から二番目の白丸で囲った 星と三日月 は神がこの場面に登場する事を示し、そして角付きの帽子をかぶっている人物が神ということを示しています。

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椅子に座っている人物が水神エアです。
水神エアは神の椅子に座り、手には壷を持っています。壷からは大量の水と共に水神のアトリビュートである魚と亀が溢れ出ています。

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二つの顔を持つイシムド神は空神エアに仕える伝令の神です。アンズーと戦の神ニヌルタが訪れた事を伝えます。

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左の二人はアンズーと戦の神ニヌルタです。
アンズーは罪を犯し、もう神ではない為に角つきの帽子をかぶっていません。また、翼が折られてすでに尾しか残っていない鳥の姿です。
戦の神ニヌルタはアンズーの手を押さえていることが分かります。

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水神エアの後ろにはギルガメッシュが刻まれています。神ではないために角つきの帽子をかぶっていません。

その後にどのような裁きがアンズーに下ったかはまだわかっていません。

とっても気になりますが、円筒印章やバビロニア神話においては今も研究されてますから新しい発見が未来にあるかもしれませんね(^-^) 

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この印章は類い稀な大きさと珍しい題材、バビロニア神話を表す円筒印章としてマスターピースと言える素晴らしい作品です。

ではこれだけの素晴らしい作品を持っていたのは誰なのでしょう??

これだけの大きさの円筒印章なので当時も位の高い人物が持っていた可能性が非常に高いと考えられます。
それは王の使いや、豪商などもあげられますが(円筒印章は貿易にもつかわれていた為)、神話を題材に選んでいるところから、この題材を印章として使う必要があった人物、、、おそらく、エア神に仕える高位の神官が持っていたと思われます。

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当時、エア神を祭る神殿が沢山あったエリドゥと呼ばれる都市のイラスト。
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エリドゥからエア神の像を船に載せて運ぶイラスト。

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神官がいた神殿はジックラトと呼ばれていました。

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メソポタミアのサルゴン王
古代オリエントにおいてもっとも重要な王です。
在位紀元前2334年頃 – 紀元前2279年頃

 

このマスターピースといえる円筒印章が約4千年前に誕生し、私たちの前に姿を表してくれるのは素晴らしい奇跡ですね。
歴代のオーナーが大切にしてきた証です。全てに感謝したいと思います。
 
私以前にどのような人が持っていたのかというと、パリの有名な古代美術商のオーナーであったJ.-Ph. MARIAUD de SERRESのコレクションから、パリの古美術商GALERIE GILGAMESH を経て、今、私の手元に来てくれました。
次のオーナーがどのような方で、この円筒印章がどのような運命をたどるのか、想像するととてもロマンティックです。

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GALERIE GILGAMESH カタログ掲載(上から二番目)

 

アッカド円筒印章  〜 生命の源 水神エアの裁き〜
アッカド (紀元前2350~2200年)
素材 貝の軸 4.6cm×2.7cm
価格 お気軽にお問合せ下さい。
 

 

 

Parisのアンティークディーラー 仙波亜希子 Akiko semba

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