17世紀 リヨンの聖アレクサンドル(?)守護聖人のエナメルのペンダント


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「The Guardian Angel 」Pietro da Cortona 1656

キリスト教徒達は、人には生まれながらにして守護天使と呼ばれる存在が寄り添い、守護天使によって生涯にわたって見守られると考えていました。

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守護聖人 ジャンヌ・ダルク

人々は守護天使に見守られますが、神に祈りを捧げる時に、ただの人間である自分が直に神と話すのは余りにも恐れ多いことだと考え、神への祈りを直接伝えるのではなく、まず、守護聖人へ託しました。守護聖人とは、特に神への信仰が厚かった人物のことです。守護天使は一対一でその人だけを見守りましたが、守護聖人は多くの人々を同時に支えていました。

古では、キリスト教徒達は、子供に名前をつける時に、自分の子供に加護を与えて欲しい守護聖人と同じ名前を子供に与えました。このことは、西洋の絵画にもよく現れています、例えば、、、

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 「The Moulins Triptych」1498 Jean Hey

左側 ひざまずいて手を合わせるブルボン公爵ピエール2世の上に描かれているのは、聖ピエール(聖ピーター)

右側 ひざまずいて手を合わせるピエール2世の妻、アンヌ・ド・ボージューの上に書かれているのは、聖アン(聖アンナ)

ピエール2世とアンヌ妃は、それぞれの守護聖人を通して、聖母マリアと幼子イエスへ祈りを捧げています。

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この手をあわせて祈る女性の名前はおそらくマドレーヌだと思います、

それは彼女の守護聖人が香油の壷を持った聖マドレーヌだからです。

このように、聖人は、その聖人が誰であるかを示す印であるアトリビュートとともに表現されることがあり、例えば、アレクサンドリアの聖カタリナのアートリビュートは車輪、聖アポロニアのアトリビュートは歯を抜くためのハサミです。

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アレクサンドリアの聖カタリナ 〜足下の壊れた車輪〜

Fernando Yáñez DE LA ALMEDINA Santa Catarina de Alexandria (1505 – 1510)

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聖アポロニア 〜右手に持つ歯を抜くハサミ〜

Zurbarán, Francisco de (1598 – 1664) – St. Apolonia

歯を抜くハサミなど、面白いものがアトリビュートになっています。アトリビュートは、生前に聖人が何をしたか、聖人の身に何が起こったかを示しています。これらは調べるととても面白いです。

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そして、今回ご紹介するのは、17世紀の大変に希少なエナメル作品、このペンダントは、キリスト教徒にとって大切な存在であった守護聖人のエナメルペンダントで力強い暖かさを感じます。これは美術館に所蔵されているべきジュエリーの一つです。本体はギルトではなく金で出来ており、素晴しい重さ、青と赤のエナメルは鮮やかで美しく、大変素晴しい出来映え、スペインかフランスのどちらかで制作された作品です。当時のフランス王、ルイ13世はスペインのアンヌ・ドートリッシュと結婚し、また、ルイ14世もスペインのマリー・テレーズ・ドートリッシュと結婚していたので、スペインとフランスは、両国間の影響で作風が良く似ているのです。

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これらは、17世紀の同時代の守護聖人の同タイプのペンダントと19世紀に古いスタイルで作られたペンダントです。

左  19世紀 フランス? 19世紀に17世紀のスタイルで作られた 聖 ドミンゴ フェレール

中  17世紀 スペイン 幼子 イエス

右  17世紀 スペイン パドヴァの聖アントニオ

参考図書 el arte de la joyeria en la colección lázaro galdiano    p40, p41

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この守護聖人が一体誰なのか?ですが、特徴として、顔立ちが若いことから、若い聖人ではないかということ、そして黒い大きな十字架を持っていることです。この大きな十字架はこの聖人が磔にされても信仰を貫いた事を示しています。

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リヨンの聖アレクサンドル

この聖人が誰なのか、いろいろ調べてみましたが、聖人は沢山いるので、残念ながら確かなことはわかりませんでした。一人、候補としてリヨンの聖アレクサンドルがいるので、説明をしますね。

エピポディウスと彼の友人アレクサンドルはキリスト教の聖人としてあがめられています。エピポディウスはライアンの生まれ、一方のアレクサンドルはフリギアの生まれであったと言われており、職業は医者でした。二人はどちらもマルクス・アウレリウスの治世に殉教しています。

エピポディウスとアレクサンドルは幼いころからの親しい友人であったと言われています。エピポディウスは固く独身を貫いたと言われており、キリスト教の仕事に身を捧げました。二人はどちらも投獄・拷問の後に、野生動物のいる闘技場に放り込まれ、うめき声など一言も出すことなく、ただ心の中で神と談話を交わしながら死んだ、又は磔によって死んだと言われています。

6世紀に、彼らの遺骸は聖イレナエウスの遺骸と共に、ライアンにある聖ジャン大聖堂の祭壇の下に安置され、この墓地では、奇跡が報告されています。

 

では、全体像をご覧下さい。

 

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17世紀当時に、このエナメルペンダントは持ち主を強く勇気つけて守っていたのだと思います。作品からは生き生きとした生命力、力強さ、暖かいオーラを感じます。

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エナメルのダメージは、希少価値から考えて全く問題の無い範囲のダメージです。そして、ダメージは、この作品が実際に使われて、愛された証でもあるのです。

古いエナメルでパーフェクトコンディションの場合は、リペアされている可能性の方が高いです。

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底の4隅には天使の装飾が施されています、そして、このペールブルーのエナメルは典型的な17世紀のエナメルカラーです。

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17世紀から数百年にわたって存在する守護聖人のエナメルペンダントは、希少で美しい、素晴しいお守りなのです。

守護聖人 リヨンの聖アレクサンドル(?)のエナメルペンダント

17世紀 スペインorフランス

エナメル ハイキャラットゴールド

5,4cm×2cm 22,3g

☆☆この作品はご売約済みです☆☆