ロシアのアンティークジュエリーはファベルジェが有名ですが、素晴らしい作品を作っているのはファベルジェだけではありません、ファベルジェではなくても帝室に作品を献上している工房があります。その一つをご紹介致しましょう(^-^)
ロシア ミニアチュールエッグ Koechly, Friedrich Christian 作(Фридрих Христиан Кехли)
(☆ご売約です、お買い上げありがとうございます。)
このエッグを作成したフレデリック クリスチャン ケーフリがその工房です。
〜フレデリック クリスチャン ケーフリ (Фридрих Христиан Кехли 1838~1908)〜
ペテルブルグの宝飾工房および金細工ダイヤモンド製品の宝飾店のオーナーであり、
工房は1864年から1909年まで登録が知られています。
ジュエリーを専門とし、1870年ペテルブルグで開催された全ロシア博覧会で銅メダル受賞。
1898年には商工業施設検査委員に選出され、他に芸術産業協会メンバ-も務めています。
1900年パリ万博 トロカデロ
1900年パリ万博 プチパレ
1900年のパリ万博にはファベルジェと同じく審査員として出展。
マリア・フョードロヴナ(アレクサンドル3世妃)Мария Фёдоровна
1902年にはマリア・フョードロヴナ(アレクサンドル3世妃)ご用命の帝室御用達商の指定を受ける。
同時に帝室官房評価委員も拝命。
マリア・フョードロヴナのダイアとサファイアのティアラを作成し、
息子ニコライ2世へのシガレットケース、
帝室プレゼンテーション用の記念ブレスレットなど納品しています。
(マリア・フョードロヴナはデンマーク王室出身、実姉は英国王エドワード7世妃アレクサンドラ、アレクサンドラ妃の結婚記念クラバットピンはこちら(^-^))
1903年Кехли Ф.И & Ф.Ф 商会を設立。
1911年フリードリッヒの息子テオドールの死後閉店。
フレデリック クリスチャン ケーフリの工房の刻印。
ロシアの刻印はロシア語(キリール文字)とローマ字表記とがありますから、
ロシア作品のアンティークをお持ちの方は是非確認してみて下さい(^-^)
〜ギャラリーで扱っている他のロシア作品をご紹介致します。
品物に刻印されている重要なホールマークの写真も掲載しましたので確認してみて下さいね。〜
革命前 ロシアブローチ&ペンダント
ロシア 塩入れ SAZIKOV
ファベルジェ ナイフ&フォーク
仙波亜希子 Akiko semba
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携帯電話 080-3364-3978
仏電話番号 0033(0)9 53 53 51 47
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中世の石付きの指輪 12世紀〜14世紀
極めて年代の古い指輪にはロマンがあります。
ローマ帝国の崩壊からルネサンス初期までの期間に、中世ヨーロッパで身につけられていたジュエリーは、強烈に迷信的、宗教的、階層的で、階級を意識した社会を反映したものでした。イギリスとフランスでは金や銀、貴石を身につけることが許されていたのは、聖職者、王族と貴族のみだったのです。ギリシャ・ローマ時代に起源を遡ることができる有名な宝石細工職人達は、それぞれの貴石に強烈な呪術的特性を見出し、それぞれの石を据えるべき金属を定めました。
この興味深い時代のジュエリーには数多くの役割、目的があり、中世の当時の人々には明白であったジュエリーの役割は、現代の私たちには良く分からないことが多いです。
これらのジュエリーを身に着ける事は、所有者の富や地位を誇示し、アイデンティティを強調するための手段であっただけでなく、多くのジュエリーは強力な呪術的な力も持っていたのです。
古代ローマ人を刻み込んだ宝石や、すばらしいセイロンブルーサファイヤを留めた指輪や、全体に聖人達の姿を刻み込んだペンダントの主要な目的は、それを身につける人を危害から守り、社会でのその人の地位を確立することだったのです。
素晴らしい中世の3つのリング
中世の指輪は手に取ると過去への夢を見させてくれます。遙か以前から存在した指輪を通して私達は現代から過去へタイムスリップできるのです。それ故に多くのコレクターが、特にゴールドで出来た指輪を探し求めています。しかし、強く理解しなければならないのは中世の指輪は非常に稀少であり見つけるのが非常に困難なのです。したがって多くの偽物が存在するのです、 偽物の中世の指輪が作られ始めたのは19世紀のことです。
ゴールドは中世期には、古代期よりもはるかに稀少な非常に貴重な金属となっていました。古代および8世紀頃までは、指輪は死者と共に墓に埋葬されていましたが、中世になるとその墓には、司教と修道院長の墓を除いて、指輪はありませんでした。夢を誘うこれらの中世の指輪を見つけることが可能な唯一の場所は、地面、川の中、隠された宝(秘蔵財宝)の中(テラコッタの鉢の中や、壁や井戸の中に隠された箱の中など)です。以下に例を挙げます。
A) 土中より発掘された中世のリングは大抵の場合は、非常に悪いコンディションです、常にオリジナルストーンは失われ、フープは潰れています。
左 エメラルドがセットされたゴールドのリング 13世紀〜14世紀
右 ガラスがセットされた古代ローマ時代のリング
B) 川から発見されたリングは時々良い状態で見つかり、滑らかで優しい特別なパティナを持っています。
川で発見されたサファイヤがセットされた金の指輪 12世紀〜13世紀
C) 秘蔵財宝から発見される指輪は、状態が良いことが多いですが、非常にまれです。
右 ダイヤモンドがセットされたゴールドのリング 14世紀
左 色づけされたガラスがセットされた金の指輪 13世紀 ホーランド
また、中世の指輪にはサイズの小さいもの(現代人よりも体格が小さかった)や、大きいもの(手袋の上から着用)が多く標準のサイズがあまり無いことも理解する必要があります。ゴールドは非常に稀少であったため、指輪は軽量なものがほとんどです。
ルビー、エメラルド、サファイヤの3つの貴重な石が一つの指輪にセットされた大変珍しい指輪
ギャラリーにて扱っております、是非ご覧下さい。
これらの理由から、状態が良く、着用可能なサイズの指輪を見つけ出すことはほぼ不可能です。これが、非常に数多くの偽物が存在する理由なのです。
〜偽物には3種類あります〜
1 – 台も石も完全に偽物
2 – 指輪の台はオリジナルではあるが、石は後から置き換えられたもの
3 –すべてオリジナルではあるが、修繕されているか、2つの異なるパーツが混在しているもの(フープとベゼルなど)
1) 台も石も完全に偽物
特に目を引くゴールドの指輪に、偽物が非常に多く見られます。フェイクメーカーのオリジナル作品であることもあり(この場合、本物のリングには存在しない奇妙なデザインのものが多いです)、オリジナルの指輪を複製したものもあり(この場合、公共コレクションかプライベートコレクションにそのプロトタイプを見つけられることもあります)、オリジナルの指輪から型取ったものもあります。
この型取りの場合、特に宝石なしのゴールドの指輪では、見分けるのがより困難です。フェイクメーカーはゴールドのモデルを使用して、銅、銀で型を作り、新しいものを鋳抜きます。しかし、合金部分(現代のものと異なり、国や時代によっても異なります)や、ゴールドの表面(表面の艶、傷み)、セッティング、石、刻印を良く調べることで偽物を見分けることが可能です。
ガーネットがセットされたゴールドのフェイクのリング 12世紀のスタイル
2) 指輪の台はオリジナルではあるが、石は後から置き換えられたもの
フェイクメーカーは石のないすばらしい本物の台を見つけた場合、大抵、現代の石を留めます。その石の起源(現代の採掘場か古い採掘場か)、石のカッティング、石の研磨、特に、拡大レンズでセッティングを経験に基づいてよく調べれば、その石がオリジナルか否かを確認できます。
石が失われた13世紀のリング
中世のセッティングには、爪で留めるタイプと、金で底と周囲を覆うタイプの2種類があります。セッティングを意識するとき、特に、その金属が地面や水の中に長い間あった場合、アンティークゴールドは時間と共にもろくなることも理解する必要があります。
オリジナルガーネットがセットされた13世紀のリング
ゴールドとサファイヤの13世紀のリング ギャラリーにて販売済
拡大レンズで見て痕跡が分からないようにセッティングを変更することは不可能です。セッティングが一度もいじられていない場合(指輪の台が偽物でない証明があった場合)、その石がオリジナルであることを確信できます。
以下に石を付け替えたオリジナルの中世の指輪の例を挙げます。
ゴールドとグリーンガラスのリング 14世紀(オリジナルコンディション、石を変える前の状態)
上と同じリングです、グリーンガラスを外し、現代のサファイヤをセットしています。
拡大して見てみましょう。この場合は爪がはっきり折れているので石の交換を見分けることができる例です。爪がはっきり折れていない場合は、石が古いかどうか、カッティングと研磨は古いかどうか、セッティングには傷がついているかどうかなどで判断できます。
当然このような中世の指輪の石がオリジナルのものでない場合は、その価値は下がってしまいます。
中世期、宝石職人が宝石を見つけることは非常に困難だったのです。貴石は非常に稀少でしたし、ブラジル、コロンビア、マダガスカル、アフリカ、ロシア、タイからの石はありませんでした。古代の採掘場の数も少なく、ほとんどは、宝石職人から非常に離れた地にありました。地中から発掘するための近代的な道具はありませんでしたし、カットや研磨のための近代的な道具もありませんでした。
パリ クリュニー中世美術館 ジュエリーセクション
カボションカットが特に広く使われており、カッティングは均一ではないことが多いです。多くの石が使われ、色付きガラスも使われていました。また、ローマのインタリオやカメオがセットされていることもあります。他には、水晶やパール、ガーネット、ターコイズ、スピネル、トルマリンなどの半貴石であることもあります。
ローマ時代のインタリオがセットされた13世紀の指輪 ギャラリーにて販売済。
ゴールドとグリーンガラスのリング 13世紀
貴石はさらに稀少であり、より価値がありました。大きな貴石は本当にとても稀少で、大きな貴石のついた本物の指輪は非常に高価です。11世紀から13世紀にかけて好まれた石は、青いものでした(サファイヤやターコイズ)。14世紀には、赤い石(ルビーやスピネル、ガーネット)が流行りました。もろく壊れやすいエメラルドの指輪はさらに稀少でした。ダイアモンドはさらに稀少で(ピラミッドカットのものが多い)、特に14世紀と15世紀のものが見つかります。
サファイヤとゴールドのリング 13世紀 ギャラリーにて販売済です。
3) すべてオリジナルではあるが、修繕されているか、2つの異なるパーツが混在しているもの(フープとベゼルなど)
これは見分けやすいことが多いです、近代の型は古いものとは異なるからです。二つ異なるパーツがつなぎ合わされている場合はスタイル、時代、起源が別々であることがあります。そして、この問題は中世の指輪だけではなく、より近代の指輪にも多く見られます、是非18世紀の指輪のアンティークレッスンを見返してみて下さい。古い指輪のベゼルや、指輪以外のジュエリーの一部などの古いパーツだけを取り出し、別のフープ(古いものか偽物)におさめ、古いスタイルの指輪を作ることは非常によくある事なので注意が必要です。
オトニアンリング(10世紀〜11世紀、そして19世紀) オトニアンのエナメル装飾(おそらく壁、オブジェ等のデコレーション)とオトニアンのゴールドリングを一つにし、19世紀に金のグラニュレーションをつけて華やかにした例(クリュニーミュージアム所蔵)
結果
本物の全てオリジナルの価値のある中世の指輪を手に入れ、自分の夢をピュアに保つ為にもいろいろな事に気をつけて慎重になる必要があります。本物の指輪は非常に稀で、特に状態の良い、オリジナルの石付きの、着用可能なサイズで、それほどもろくない指輪を見つけることは非常に難しく、そのような指輪は非常に高価なものであることを是非知って下さい。偽物であっても高価な価格で販売されている場合があります。
また、中世の指輪に関する十分な知識を持っている人はかなり少ないので、確信を持ってその種の指輪を購入することもとても難しいこともそ知って下さい。購入する前に、他の非常に古い宝石と同様、ディーラーからの情報を良く確認することも大切です。
そして、このレッスンでお話したことは、鑑定をするにあたって必要な知識の一部です。実際の鑑定にはより多くの知識を必要としますが、中世のリングについてより深く知って頂きたくて記しました。
類稀に大きなサファイヤがセットされた13世紀のリング
ここまでの大きさのサファイヤが留められたリングはまず見かける事がありません。
ギャラリーにて扱っていますので是非ご覧下さい。
このアンティークレッスンについて何かごさいましたらお気軽にご質問下さい(^-^)
Parisのアンティークディーラー 仙波亜希子 Akiko semba
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以前販売したナチュラルピンクトパーズのリング
ナチュラルピンクトパーズは滅多にみられない高価な宝石で、ナチュラルピンクトパーズを使っているジュエリーは石の希少性を考慮してオープンセッティングのジュエリーが多いです。オープンセッティングというのは裏からみた時に石が確認できるセッティングの事。
オープンセッティングとはこのような石が裏側から見えるセッティングの事です。
無色のトパーズをピンクトパーズに見せたジュエリーの例
ここで気をつけなければいけないのは、稀少なピンクトパーズを使ったジュエリーに見せる為に、無色のトパーズ、もしくは色の薄い品質の悪いピンクトパーズをクローズドセッティングでセットしてピンク色のフォイルを張り、色の濃いピンクトパーズのように見せている例です。
ピンク色のフォイルが張られているのがわかりますか?本物のピンクトパーズのジュエリーを探している方は石の色がはっきり確認できるオープンセッティングの作品を選ぶようにしましょう。また、ピンクトパーズに加熱処理はなく、石の色が退化する事も石の性質上全くありません。
本物のピンクトパーズのジュエリーと無色のトパーズジュエリーの対比
ギャラリーで扱っているピンクトパーズの作品も是非ご覧下さい(^-^)
ピンクトパーズピアス
ピンクトパーズリング
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アンティークの貴重な宝石について考える 〜サファイヤ ルビー エメラルド〜
宝石を理解する事はアンティークジュエリーを理解する上で最も重要なポイントの一つになります。
実際に宝石を学ぶ事はジュエリーの真贋と制作年代と制作国を知る手がかりにもなるのです。
いくつかの点を考えてみましょう。
石の産地について
まず、炭坑が発見される前にその炭坑から産出される特定の石が使われる事は勿論ありません。
例えば、ロシアのエメラルドは1830年に発見されました。ですから、1830年以前にロシアのエメラルドがジュエリーに使わる事はありません。そしてブラジル産のエメラルドは1913年に発見されましたから、1913年以前には使われていません。
ですから、1913年以前の作品にブラジル産のエメラルドがジュエリーに使われていた場合、それは、古いジュエリーの本体にブラジル産のエメラルドを後で付けたか、フェイクアンティークジュエリーか、その石がブラジル産のエメラルドではない事になります。
そしてまた、石の産地はジュエリーの制作国も教えてくれます。
18世紀 トパーズブローチ ギャラリーにて販売済
例えば18世紀のこのジュエリーについて考えてみましょう。
このブラジル産のカリブレカットのトパーズがセットされたシルバーのジュエリーは典型的なポルトガルの作品です、何故なら、ポルトガルはブラジルの炭坑をコントロールしていた為にブラジル産のトパーズを入手出来たからです。しかしポルトガルは金をそれほど持ってはいませんでしたから、シルバーの台にセットされているのです。
18世紀 エメラルド ペンダント ギャラリーにて販売済
そして同年代の同スタイルのジュエリーでゴールドにエメラルドがセットされているものがありますが、こちらはポルトガルではなくスペインの可能性があります。このように時代の特徴と呼応した形でジュエリーの産地が分かります。
しかし気をつけて欲しい事があります。石の産地を知る事は極めて難しいのです、例えば一目で他の石とは明らかに違う特徴を備えた石、モゴックルビー、ミュゾのエメラルド、クイーンスランドのオパール、カシミールサファイヤは経験により肉眼で判別できます。
Gübelin 宝石鑑定書
しかし他の石はスイスのGübelinのような顕微鏡を用いた宝石研究所によるインクルージョンと石の構成の確認によって産地の特定の可能になるのです(石によって言い切る事が難しい場合もあります)。肉眼での識別では、おそらくこの石だろう、という予想を立てる事は出来ますが、確実な判別は不可能です。
ですから、宝石をメインとした高価なジュエリーを購入される時、その品物に石について鑑定書が無い場合は、その石が何処の産地のどれくらいの品質の石かを肉眼で確実に知る事は不可能ですから、売り手が宝石学を学んでいるかどうかも確認した方が良いでしょう。
17世紀サファイヤリング 販売済
石を鑑定をする場合に石を台座から外す必要があります。爪留めの場合は石を外して、石をセットし直す事が可能ですが、この写真のように覆輪留めのような回りから包み混むセッティングの場合に石を外すと必ず跡が残って本体にダメージを与えますから、アンティークの覆輪留めジュエリーの場合は石の鑑定を行うかどうかは慎重にならないといけません。また、ここで面白い真贋の鑑定方法があり知っておいて損はないですから記します。覆輪留めでフェイクジュエリーが確定する理由の一つは、覆輪留めで石を外した跡がなく、そして年代にそぐわない宝石が留められていた場合です。
石のカッティング
石の切り方はその時代時代に特徴がでます。例えば、カリブレカットは18世紀中期からポルトガル、スペイン、イギリスに始まりました。ダイヤモンドに至ってはカッティングに華麗な歴史があります。
しかし石のカットにも気をつけて下さい、石のカットが古いからといってそれは古い年代の作品だという事にはならないのです。
ローズカットダイヤモンドを使った フェイクアンティークジュエリー
分かりやすい例でいうとダイヤモンドのカットが上げられます。時代によってカッティングが違うダイヤモンドですが、今日ではインドで品質の悪いダイヤモンドが古いスタイルでカットされ(多くはローズカットダイヤモンド)、フェイクアンティークジュエリーとして市場に出回っている例が多くあります。それらはローズカットダイヤモンドだからという事だけでアンティークジュエリーと認識されてしまうのです、このようなフェイクアンティークジュエリーを見極める事は、きちんとした知識と経験がないと不可能ですし、売り手がフェイクアンティークジュエリーと知ってて販売している場合もあるので、気をつけて下さい。
タルト型 中世のサファイヤリング
他の例でいうと、例えば変形のカボッションカット(サファイヤ、ガーネット、ロッククリスタル)は典型的な中世の宝石のカッティングです、しかし変形のカボッションカットがセットされているだけではその作品が中世の作品とは言い切れないのです。
ルネサンス カボッションルビー付き リング ギャラリーにて販売済
中世のスタイルのリングもフェイクが沢山出回っていますが、 フェイクアンティークジュエラーは中世のリングのフェイクを作る時に、本物の中世のリングを真似ます、ですから当然変形のカボッションカットを用意します、そして中世のスタイルの指輪に変形のカボッションサファイヤをセットするのです、ですから変形のカボッションがセットされているだけでは中世の作品とは言い切れません。又はもしくは本物の中世のリングで石が失われている物に変形のカボッションのサファイヤをセットする事もあります、この場合は顕微鏡でセッティングを確かめる必要があります。
そしてもう一つ、中世のリングといわれている作品にタイ産のサファイヤがセットされていた場合には、フェイクアンティークジュエリー確定です、中世のリングにタイ産のサファイヤがセットされている事はあり得ないからです、もしくは本物の中世のリングに留められていたサファイヤが後にタイ産の物に付け替えられたかでしょう。そして古いジュエリーのオリジナルのセッティングについての見極めは顕微鏡による石のセッティングについて、学ぶ必要があります、そうすることで、その石がオリジナルの石か付け替えられているかが分かるようになるのです。
石のトリートメント
地球から産出される美しい宝石達が華麗なジュエリーとして姿を現すまでには人間の手によるトリートメントが不可欠で、そのままのナチュラルな姿で私達の目の前に姿を現す事はありません。
トリートメントされていない石がジュエリーとしてセットされるのは意図されたモダンアートのようなデザインの場合のみです
例えば、切り出されたままのコランダム(ルビー、サファイヤ)等はごくごく原始的な姿をしています。このような石を美しいジュエリーにするには2種類のトリートメントがあります。この2種類のトリートメントの違いについて理解することは大切な事です。
1 日常的に行われるトリートメント
加熱によるトリートメントは日常、普通に行われる加工です。話がだいぶ遡りますが、一番歴史の古い熱加工は石器時代です、サファイヤはインドでおそらく約2千年前から熱加工されています、何故なら、石を加熱する事により石を切り出しやすくするからです、同時に石の色も美しくします。的確な石の切り出しと、適度な温度による熱加工が行われる事は普通に行われているトリートメントで、天然に産出する美しい色の宝石も実は生成の過程で熱や圧力の作用にて美しく着色したものです、したがって天然の結晶はそのままのものは美しくないものが大半です。これらはアンティークジュエリーにも用いられているトリートメントです。熱加工無しで色の美しい高品質の石は極めて稀で、非常に高価になります。
2 石そのものの質を変えてしまうトリートメント
1600度の高熱を用いた加工、石をガラスによって補填する加工、石を染める加工、色づけされたレジンにエメラルドを補填する加工、放射線によるダイヤモンドへの色づけ、これらの近代に始められた方法によるトリートメントは石の価値を著しく下げます。これらの近代のトリートメントがアンティークジュエリーに使われる事ありません。もしくはアンティークジュエリーにセットされていたオリジナルの石を外して付け替えていたり、フェイクアンティークジュエリーである場合にはあり得ます。主に、サファイヤ、ルビー、エメラルドのトリートメントについて詳しく説明しようと思います、ダイヤモンドと天然真珠については後でまた詳しくお話します。
サファイヤ
ナチュラルサファイヤは加工が難しい石です。何故ならナチュラルサファイヤの色は均一ではなく、同じ石の中でもほぼ無色の部分や、沢山のインクルージョンが含まれた部分があるからです、無色のサファイヤのすぐ隣には美しい色をした部分もあるでしょう。その為に、サファイヤのカットには多くの経験が必要とされます。石のカッターはサファイヤをよく観察し、なるべく自然のままで美しく色の均一なパートをできるだけ切り出さなければいけません。ですから、サファイヤにいわゆる完璧なカッティングはありません。
多くのナチュラルサファイヤは、極めて薄い色で多くのインクルージョンを含みます。その為、1300度の温度での熱加工により、ナチュラルサファイヤはより美しく整えられるのです。この加工なしにサファイヤがジュエリーとして用いられることは極めて稀です。この加工はアンティークジュエリーにも含まれます。
セイロン産サファイヤ 5.20ct LFG鑑定 非加熱
ごくごく稀なサファイヤのみが自然の美しい色を持っています、熱加工はジュエリーにおいて必要なトリートメントなのです。ここでも気をつけて頂きたいのは、ナチュラルストーンだから価値がある、ということではないのです。ナチュラルストーンであるという事だけで価値があるように思われがちですが、美しく無いナチュラルストーンでは意味がありません。
素晴らしいセイロンサファイヤのアールデコリング、セイロンサファイヤの証の蝶の羽と呼ばれるインクルージョンが白丸の中に確認出来ます
もし、あなたが目の覚めるような美しい色の非加熱のサファイヤを使ったジュエリーの購入を考えているのなら、宝石の鑑定をする事をお薦めします。
サファイヤリング ギャラリーにて販売済
石そのものを変えてしまうトリートメント、1600度以上の熱加工によるサファイヤ、ベリリウムの拡散加熱処理、これらは自然にはない色や濃い色を石に与える事ができます。例えば、多くのオレンジサファイヤはトリートメントされています、これらの近代のトリートメントに価値はなく、アンティークジュエリーにこれらのトリートメントを見つける事は出来ないでしょう。本来は全てのアンティークジュエリーにはフェイク、石が付け替えられている場合を除いてナチュラルなサファイヤがセットされています、中でも大きさがあり飛び抜けて美しいサファイヤがセットされたジュエリーの価格は今後上昇するでしょう。
ルビー
ルビー アールデコリング 販売済
多くのナチュラルルビーはピンクか不透明です、ナチュラルルビーで赤い色で透明感がある石は極めて稀で極めて高価です、そして宝石研究所の鑑定書のみが確かな石の価値を保証します。
1300度の熱による熱加工は通常に行われる加工です。この温度での加工で多くのインクルージョンは消え色は美しくなる為、熱加工はルビーには不可欠で、非加熱で色の美しいものは極めて稀で殆どありません。
アールデコ ルビーリング 鑑定書付き 詳細はお問い合わせください。
この石は熱加工する必要が無いほどに美しい貴重な天然の美しいルビーです、今後価格が上昇するでしょう。非加熱である事を証明する鑑定書がついています、このように最高品質の宝石を購入されたい場合は鑑定書が不可欠です、もしくは宝石学を学んでいるディーラーから購入するべきでしょう
反対に現代の石に私達は1600度の高熱によるトリートントを見つける事ができるでしょう、品質の低いルビーを人工的に美しく見せるテクニックはより進化しています。
進化したテクニックの中でより一般的なのは石をガラスで充填することです。この方法でルビーは高温で熱加工され、ガラスにより充填されます。熱加工により、その充填部分は肉眼で見えなくなります。
そして、トリートメントされたルビーは価値が低くなります。
また、アンティークジュエリーで1600度の高熱により加工されたルビーが使われたジュエリーを見つける事は不可能です。もし、高熱加工の石がついた石がアンティークジュエリーと言われている場合はフェイクアンティークジュエリーであるか、アンティークのリングに石を付け替えたかです。
エメラルドのカメオジュエリー ギャラリーにて販売済
エメラルド
コロンビアは疑いもなくエメラルドの国、コロンビアはエメラルドをよりポピュラーな存在にしました。エメラルドの最高級品は
非常に深い濃い緑にやや青が加えられたような特別な色をしています。
おそらくコロンビア産エメラルド 3.87ct LFG鑑定(フランス宝石研究所)
僅かにオイルトリートメントされています
No169のリングのカタログ掲載、コロンビア産エメラルドで有ることが記されています。
そして、エメラルドの産地の断定は宝石鑑定所のみが行う事ができます。顕微鏡で確認出来る、ごくごく僅かなインクルージョンが産地を教えてくれるのです(石によって産地を特定することが難しい場合もあります)インカ帝国では既にエメラルドが使われていましたが、文明が失われると同時に忘れ去られ、1600年以降にスペインにより再び発見されます。炭坑はアンデスの西、ミュゾ、ボゴタ、チボール等にあります。
エメラルドのインタリオリング ギャラリーにて販売済
今日では、コロンビア産のエメラルドは品質が低下しています。産出量に対して約25%のみがジュエリーとして使用されています。75%を売る為にコロンビア産というブランドを使っています。カシミールサファイヤのように、コロンビア産のエメラルドは市場から姿を消しています。ですから、貴方がアンティークジュエリーの中でハイクオリティのコロンビア産エメラルドを見つけた場合には、その石は将来に高価になります、本当に最高品質のコロンビア産のナチュラルエメラルドの価格は1キャラット数千ドルにもなり、今後も価格が上昇することは間違いありません。
他のエメラルドの産地では、1830年にウラル山脈の西でエメラルドが発見されました。当時は大量のエメラルドが発見されましたが、それらは並みのクオリティでした、それほど濃くはない薄い色で、インクルージョンも多く見られる品質でした、ごく稀なケースで非常に美しい深い色のエメラルドがウラルで発見されています。
また、ブラジルは世界で最も大きなエメラルドの発掘です。最初のエメラルドは1913年にブラジルの西方、バイアにて発見されました。他の鉱山はミナスジェイラスにあります。
エメラルドのオイルトリートメント
エメラルドは本来インクルージョンのある石です、それらのインクルージョンはエメラルドの庭と呼ばれ、石の内側に白い霜としてあらわれます、この霜は高品質のエメラルドを含めて全てのエメラルドに見られます。しかしながら、このインクルージョンをより目立たなくするには、高品質のオイルの中に石を入れてインクルージョンを見えにくくする方法が用いられています。
オイルトリートメントはサファイヤの熱加工にように石の美しさを引き上げ、通常普通に行われている加工です。そしてエメラルドの価格には影響はありません。
しかし、エメラルドを色づけされたレジンにつける事は、石自体を変えてしまいます。石を色づけされたレジンにつけ込む事は、色を濃くします。
エメラルドの色は価格を決定する上でもっとも重要なポイントとなります。高価なエメラルドを購入する場合は気をつけてください。
結果
ここで大切な事はアンティークジュエリーだからといって、全ての石が非加熱ということではありません。すでに約2千年前には熱加工が行われていました、9割の石は熱加工がされているでしょう。しかし、中には熱加工をする必要がない程に美しい目の覚めるような色をしていて、インクルージョンの有無も問題の無い石があります、これらの最高の石のみが貴重で高価な宝石なのです。アンティークジュエリーであれば非加熱ということではありませんから、もしあなたが価値のある素晴らしい宝石を購入したいのなら、最高の色と非加熱で有ること、そしてそれを証明する鑑定書がつけられているかどうかがとても大切になります。
アンティークの場合、石をセッティングから外す事は時に大きな問題になります。石を外してしまえば、それがオリジナルのアンティークストーンかどうかがわからなくなり、時には枠にダメージを与えてしまうからです。ですから、アンティークジュエリーで最高の非加熱の宝石を購入したい場合には、一つに方法があります、売り手が宝石学を学んでいるかどうかを確認してください。
宝石においては極めて稀な最高品質の宝石のみが将来的に価値が高まります。例えナチュラルストーンであっても最高クラス以下の宝石の価値は現在も未来も高まりません。例えば、透明感がありすぎたり、色が濃く透明感がなさ過ぎたり、インクルージョンが多すぎたりするものです。ですから、石をメインとしたジュエリーを購入される場合には、売り手に言われるままではなく、石の品質について自分でもよく確認する事が大切になります。
Parisのアンティークディーラー 仙波亜希子 Akiko semba
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仏電話番号 0033(0)9 53 53 51 47
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中世ヨーロッパではペストの蔓延などで地域によっては死亡率が5割を越していたなど、死が極めて身近なものでした。
愛する者の命が目の前で失われていくのが当たり前の日常の中、人々は死や死後について考え始めます。
死後に神の祝福を得て天国へ召される為に生き残った人々が自然と教会へ集まり、宗教が重要になっていったのは自然な流れだったのです。 同時に、独特の死生観を反映した作品が生まれます。
死の舞踏 ミヒャエル・ボルゲムート 1493年
死への恐怖感が頂点に達した人々は、埋葬や祈りの最中に狂ったように踊り始めました。それを表現した作品は死の舞踏と呼ばれています。
死の舞踏では誰にでも死は平等に訪れる事を表す為、聖職者、貴族、若者、美少女、などのあらゆる人物が書き込まれる事もがありました。
この作品はヴァニタスと呼ばれる静物画です、ヴァニタスとはラテン語で虚無を意味します。ヴァニタスは人生の儚さを表しており、描かれるモチーフにはそれぞれに意味があります。
この作品でいうと、左の花は若さや成熟を表し、右の砂時計は過ぎる時間を表しています、そして正面に置かれた骸骨、これは花で表現された若さに砂時計で表現された時の流れが加わり、いかなる若さにも確実に死が訪れる空しさを意味しているのです。
死を常に意識し神を敬うことが重要だと考えられていた中世の後に、それらの精神的、宗教的な重さを振り払うように訪れたルネサンスでは、人生の限られた時間を神への祈りに捧げるのではなく、縛られない自由な精神を持つリベルタンが登場します。
リベルタンは常識や戒律よりも自らの感じる自然な喜びや、欲望に忠実に生きる事を重んじた人々の事です。
Pierre de Bourdeille 1540〜16146月15日
フランスの歴史家、伝記作者の Pierre de Bourdeilleはリベルタンの一人でしょう。
名門貴族出身のBourdeille男爵家の三男で奔放な生活を好みヨーロッパ各地を放浪し、軍に入隊後は多くの戦にも参加し功績をあげましたが、1589年に落馬による後遺症で半身不随となり、その後は自身の経験や見聞に基づいた執筆活動に専念します。
今日でも有名なのはles Dames galantesという作品で、性に奔放であったルネサンスの婦人達について綴った作品です。
このカメオはルネサンス時代に作られた特別なカメオです。
女神や神話などではなく、写実的で特殊な人物がモチーフに選ばれているところから特定の人物を表現した作品であるといえるでしょう。このような特別な作品が生まれるには必ず時代背景とリンクした理由があるのです。
ルネサンスには古典主義が生まれましたから、古代ギリシャの哲学者を作品のモチーフとして選ぶ事がありました。このカメオの容貌をよく見ると、古代ギリシャの哲学者の一人であるディオゲノスに良く似ていることがわかります。
ディオゲノスは極めて自由な精神の持ち主で楽しい逸話が沢山残っている人物です。
アレクサンドロ大王に何か望む物はあるか?と聞かれた時でさえも、日陰になって日向ぼっこが出来ないからからそこをどいて下さい、と答えたなど、物資的な富に興味を示さずにボロボロの着衣で酒樽に住んだと言われています。
常識や戒律に縛られない自由な精神はルネサンスのリベルタンに通じる物があります。おそらくこのカメオの注文主もリベルタンで、自由な精神を持ったディオゲノスをモチーフに選んで作成をさせたのでしょう。本当に素晴らしいカメオ作品です。
そして、このような大型のカメオは装飾品ではなく、家具などにはめ込む装飾用として作られたものです。
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