美しい19世紀のストーンカメオ、装飾品に特徴があります。ちりばめられた真珠の髪飾り、ネックレス、そして三つ叉にわかれた耳飾りを身に着けています。この三つ叉に別れた特徴的な耳飾りと同じ耳飾りを着けた女性の古代のコインがエルミタージュ美術館所に所蔵されています。
ペルセポネのドラクマ銀貨 エウアイネトス作 紀元前413年〜400年 シチリア シラトゥーズ エルミタージュ美術館所蔵
このコインです。ギリシャコインの中で最も大きなもののひとつであるこのシラクサのドラクマ銀貨には、女神デメテルの娘であり、冥界の神ハデスの妃であるペルセポネが刻まれています。カメオと同じデザインのイヤリングを身に着けている事から、このカメオがペルセポネをモチーフにした事がわかります。ペルセポネは小麦の穂で作った花冠を飾った豊かな髪を持つ若い女性として描かれ、 耳はその豊かな髪に隠されています。これは、ペルセポネが冥界にいる間は地上に豊穣はないということを表現しているのです。またシチリアのオルティージャ島付近に多数生息していたイルカも描かれています。
ペルセポネ 1874年 Dante Gabriel Rossetti テードギャラリーロンドン
古代のコインはその都市に関連する神や神話をモチーフに選ぶ事が多いですが、シチリアのコインにもペルセポネだけではなく他のモチーフとも関連があるようです。
このコインはシラクサの守護妖精であるアレトゥーズの肖像が特徴的な古代シラクサ硬貨の一つ、ペルセポネの硬貨とほぼ同じデザインです。
アレトゥーサは、アルテミスと同一視される場合があり、また先に紹介したコインのようにペルセポネと同一視される場合もあります。彼女の肖像にも多くの場合、古代にはオルティージャ島付近に多数生息していたイルカが描かれています。
アレトゥーズとはオリンピアの近くで戯れていた水の精の事、川の神アルペイオスが彼女に恋をして追いかけていました。アレトゥーズは月と狩猟の女神であり、また女性の純潔を守る女神でもあるアルテミス (ローマ神話ではディアーナ) に助けを懇願しました。アルテミスは彼女の姿をシラクサにあるシチリアのオルティージャ島の地下から湧き出す泉の流れに変えました。アルペイオスは臆せずアレトゥーズを追って川を地下に流し込んだため、二人の水の流れは永遠に混ざり合い、オルティージャ島にあるアレトゥーサの泉になっているのです。
このデザインの硬貨は、古代ギリシャの貨幣としては最も美しいものの一つでしょう。紀元前5世紀初頭のアルカイック様式から同世紀末のキモンやエウアイネトスの代表作にいたるその急速な発展は、その期間におけるギリシャ文明の急速な発達と軌を一にしているのです。
Parisのアンティークディーラー 仙波亜希子 Akiko semba
携帯電話 080-3364-3978
仏電話番号 0033(0)9 53 53 51 47
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これらはアンティークジュエリーがフェイクか本物かのもっとも重要なポイントです。
1、デザイン
2,作り
3,素材
4,石
5,ホールマーク
6,摩耗の仕方
このポイントは言葉で説明をするのはとても難しいです。質の良い経験と知識だけが真贋の見極めを可能にします。参考画像としてフェイクアンティークジュエリーを作っている工房のカタログかサイトを探しましたが、インターネット上で見付けることはできませんでした、フェイクの工房は高解像度の写真を掲載したり、カタログを作ったりはしたがらないからです。
それほど鮮明な写真ではありませんが、アールデコのオニキスのリングを例に真贋を説明させて頂きたいと思います。
1, まずは簡単な例から、、
上段はフェイクです。デザインも悪いですし、ミルグレーションはモダン、セッティングもぼってりと重くもたついていてモダンです。素材はプラチナではなくホワイトゴールド、石はモダンのカッティング、摩耗の後は見られません、写真には写っていませんがホールマークはありません。
下段は本物です、デザインも良く、セッティングも古く、素材はプラチナ、ダイヤモンドも古いカット、摩耗の跡も見られ、写真には写っていませんがホールマークがあります。
2,より難しい例です。
左はフェイクです。デザインが固く、セッティングもモダン、ダイヤモンドはオールドカットですが、ダイヤのカットが古いからといって本物の証にはなりません、素材はプラチナではなくホワイトゴールド、ベゼル裏の写真を次に掲載しますが、ベゼル裏の作りも悪く、摩耗の跡もありません、写真には写っていませんがホールマークはありません。
右は本物です、デザインも良く、古いセッティングです、ベゼル裏の作りも良いです、素材はプラチナ、ダイヤモンドも古いカット、摩耗の跡も見られます、本物ですがホールマークはありません。
そして、これらリングの裏面も確認して下さい。左がフェイクで右が本物です。裏を見ると分かりやすいと思います。
他の二つの本物のアールデコリングのベゼル裏も掲載しておきますね。よく確認してみてくださいね。
3、では次のリングはどうでしょう?
このリングがフェイクなのは簡単にわかります、デザインも悪く、ミルグレーションもモダン、素材は一部プラチナですが、ロジウムメッキです、摩耗の跡はありません。
4,見分けが難しい例です。
このリングはフェイクですが、見分けるのは難しいと思います。ミルグレーションはそれほど悪くありません、素材はプラチナ、ダイヤモンドはオールドカットですが、センターストーンのセッティングはモダンです、デザインが固すぎるのと、摩耗のあとがありません。そしてこのフェイクアールデコジュエリーを作っている工房もわかっています。
5,悪いポイントが混ざっているけれども本物のリングの場合
このリングにはいくつかの悪い点があります。ミルグレーションが無く、ホワイトゴールドが使われています(セッティングはプラチナです)しかし、この指輪は本物です。デザインが優れていますし、作りも古い作りです、ダイヤモンドも古いカットで、摩耗の跡もあります。そして写真には写っていませんがフランスのホールマークがあります。
6,本物のアールデコのリング達。
これらの3つのリングは100%本物です。バゲットカットダイヤモンドとハイクオリティのカリブレカットのオニキスはフェイクではまず見る事はないでしょう。
7,本物の素晴らしいアールデコのリングの例。
そして、次のリングは文句のつけようがない素晴らしいアールデコの本物のリングです。各ポイントをチェックしてみて下さい
デザインは本当に素晴らしいですし、作りも完璧にアンティークです、裏の作りのオープンワークも美しいですし、石のカットも古いカットです、素材はプラチナでホールマークもきちんと打たれているのが分かります。疑うべきところは見あたりません。
8,それでは次のリングを見てどう感じますか?
この写真をよく見て、今までに説明した事を思い出して感じながら、良いポイント、悪いポイントを確認してみて下さい。
アールデコジュエリーの中にも偽物と本物があると言う事を感じながら、視野を広げるような感覚で考えて見て下さいね。
このリングが本物かフェイクかを知りたい方はお気軽にご連絡下さい。
ホールマークの有無は、経験がなくても分かりやすいチェックポイントだと思います。ホールマークについてのレッスンも掲載していますので是非読んで下さいね。
アンティークレッスンNo7 〜ホールマークの大切さ 金の品質 年代 産地〜
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もし、アールデコジュエリーのクオリティの高さとジュエリーが本物かフェイクかを知りたかったら、プラチナ製かどうか?とプラチナを示すホールマークが使われているかどうか?は重要なチェックポイントになります。
カルティエ アールデコプラチナ ブローチ 1925年頃
本来、プラチナは自然に白色で密度が濃く重い金属です。金とは違い大抵は950/1000のピュアな状態で使われます。例えばプラチナのリングの重さは18kの金のリングの重量よりも4割程重いのです。
イギリスのプラチナのホールマーク 950/1000
プラチナは全ての酸、酸化(金のように)に耐性があり、1775度の熱に耐えます(金は1064度です)。
プラチナは他のどの金属よりも耐久性が強く摩耗しにくい為に、艶や輝き長く保つ事ができます。他のどのような素材もプラチナのように作られたばかりの日の艶や輝きをエレガントに保ち続けることは出来ないでしょう。
そしてさらに素晴らしいのは、ピュアなプラチナの性質は金属アレルギーを起こしにくいので、敏感な肌の人々でもジュエリーを楽しむ事が出来る事です。
プラチナは17世紀のコロンビアで発見されました。しかしこの時代にプラチナはまだジュエリーの素材としては使われません。あまりにも丈夫で加工することが困難だった為です。
プラチナ製 砂糖入れ 1786年 メトロポリタンミュージアム所蔵
加工の難しかったプラチナですが、1786年にフランスの金細工師、Marc Etienne Janetyが砂糖入れにプラチナを加工する事に成功します。現在この砂糖入れはニューヨークのメトロポリタン美術館に収蔵されています。
1825年にはロシアのウラルでプラチナの炭坑が発見され、100年に渡り、主要な炭坑となりました。
1888年にプラチナはカナダでも発見され、1920年から1950年の間に主要な炭坑になりました。そして、1924年に南アフリカでもプラチナは発見されます。
カラーゴールドと、貴重な金属プラチナ が使われたジュエリー例 1880年頃
19世紀の間、プラチナは主にピンクゴールド、グリーンゴールド、イエローゴールド等の3カラーゴールドの細工と共に、上記写真で確認できるようなごくごく小さなパーツに使われていました。
19世紀後期より、1920年以前の20世紀初期にかけて、ジュエラーはダイヤモンドを留める銀の変わりにプラチナを使い、金の土台にセットしていました。
何故なら、プラチナは色が変わらなかった為(シルバーは酸化により色が変化します)と、耐久性に優れていたからです。
ヨンカーやホープなどの世界の最も有名なダイヤモンドもプラチナにセットされています。
フランスのホールマーク プラチナ 950/1000
1912年の12月、フランスでプラチナを示す新しいホールマークが生まれました、それは 犬の頭の形のホールマークです。1912年12月以前はプラチナには18kの鷲のホールマークが使われていました。
イギリスのプラチナのホールマーク
そして、イギリスでも上記のような特別なホールマークがプラチナに使われていました。
ベルギー女王のダイヤモンドのプラチナ製の冠 カルティエ 1910年
20世紀初期にカルティエは、時代を見据えた芸術的な直感によりオールプラチナでジュエリーを作る事に挑んでいます。
ウィンザー公爵、ウィンザー公爵夫人
ウィンザー公爵夫人は、昼はゴールドジュエリー、夜に身に纏うジュエリーは一級品の証プラチナ製のジュエリーのみを選んでいました。
18kのフレンチホールマーク
1930年以降、ジュエラー達は特にプラチナ製のジュエリーの需要の高まりを感じていましたが、プラチナは金の30倍珍しく高価な金属だったのでジュエラー達は低価格のジュエリーにはプラチナの変わりに ホワイトゴールド を使い始めるのです。
金は自然な黄色で、ホワイトゴールドとはイエローゴールドに他の金属を混ぜたものです(大抵は750/1000の金と250/1000のニッケルです)
フランスの18kとプラチナの両方のマークが一つのジュエリーに打ち込まれている例
これが使われるのはダイヤモンドに触れる部分がプラチナ、フープがホワイトゴールド等です。
一部のジュエラー達はホワイトゴールドとプラチナを同じジュエリーに使っていました、例えば、指輪のフープにはホワイトゴールド、貴重なダイヤモンドを留める爪にはプラチナを使っていたり、または金とプラチナの色の差を隠すためにロディウムめっきとして表面を覆うこともあります。しかし、ロディウムは使用にともない摩耗してくるので地の金色が少しづつ見えてきます。
カルティエ ブローチ プラチナ、ホワイトゴールド、サファイヤ 1949年
1940年以前、最高品質のジュエリーには全てプラチナが使われていましたが、1940年〜1945年の間にはプラチナは戦争に使われ、ジュエリーからはほぼ姿を消します。しかし、カルティエのような有名なジュエラー達は高価なジュエリーにはプラチナ(時にはホワイトゴールドを混ぜていました)を使い続けていたのです。
アールデコジュエリーがプラチナかホワイトゴールドか確実に知るには、ジュエラーもしくはディーラーは特別な酸で金属をチェックする必要があります。
しかしより簡単な方法はホールマークを確認することでしょう。
ホールマークについてもアンティークレッスンでご説明していますので、興味のある方はこちらから是非ご覧下さい。
アンティークレッスンNo7~ホールマークの大切さ 金の品質 年代 産地〜
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ジョージアンとルイ16世スタイルのリングの問題点
現存しているジョージアンとルイ16世スタイルのリングのコンディションにはいろいろなパターンがあります。
完璧にオリジナルの状態を保ったものから、リフォームされているもの、一見オリジナルに見えるけれど別々のパーツから構成されて一つのリングになっているものまで様々ですから、写真を交えながら詳しく説明したいと思います。
このレッスンでは、「ベゼル、フープ、ショルダー」という言葉を頻繁に使っています、これらは指輪の各名称です。ベゼルとは黒で囲った部分の事、指輪の正面のことですね、フープとは青で囲った指を入れる輪の部分の事です、ショルダーはベゼルとフープをつないでいる赤で囲った部分の事です。
1-リングを構成するパーツ全てがモダンフェイクの場合
リングのパーツ全てがモダンフェイクは存在が稀です、何故かというと18世紀の指輪は技術的に再現が困難だからです。ただ、18世紀のフェイクダイヤモンドリングは高価で販売するのが簡単で採算もとれるのでフェイクが多く製作されていますから、気をつけた方が良いでしょう。過去のアンティークレッスンでジョージアンのフェイクダイヤモンドリングについて詳しく説明していますから、ご興味のある方は是非ご覧下さい。
〜1780年の本物のアンティークのリング(左)18世紀のフェイクのリング(右)〜
また、19世紀のリングが18世紀のリングだと勘違いされている場合もあります。なぜなら、イギリスのジョージアンスタイルは19世紀初期まで続いていた事と、フランスではルイ16世スタイル(ネオルイ16世スタイル)は19世紀中期まで流行していたからです。
〜フランス、18世紀のスタイルの1850-1870年製作の二つのリング〜
2-ベゼルとリングが後の時代に別々に付け替えられている、又は修復されている。
これが最も多くあるパターンです。これはどういうことかというと、細部まで18世紀そのままのデザインのリングは19世紀には流行していなかった為、19世紀の所有者がリングをブローチやペンダントにリフォームしたジュエリーが沢山残っています。
一時期は流行遅れになってしまった18世紀のデザインのリングですが、時代が流れるにつれて、再び人気が出始めます。それにつれてペンダントやブローチにリフォームされたリングが再びフープへとセットされたリングも多くあります。
そのようなリフォームを経たリングは全てがオリジナルの状態のリングよりも価値や価値が下がるので、購入の際には気をつけた方が良いでしょう。
それでは実際に18世紀のリングがどのような状態で残っているのか、二つの例を見てみましょう。
まず、次の二つはベゼルは本物、リングがモダンのパターンです。
〜ベゼルは本物でフープがモダン〜
〜ベゼルは本物でフープがモダン〜
この二つの例はベゼル部分はアンティークですが、黒丸で囲ったフープ部分がモダンである事はすぐに分かります。繊細ではないボテッとした形、金の色も悪く、摩耗の跡もありません。
〜ベゼルもフープもアンティークですが別々につなぎあわせている例〜
そして、このダイヤモンドリングの場合はベゼルもフープも18世紀の本物なのですが、このリングはオリジナルの状態ではなく、本来、別々のパーツだった二つをレーザーやスズで一つにロウ付けしたものです。黒丸部分に跡が見えます。
3-リングのベゼルが、本来はブローチやペンダント、イヤリングの一部であった場合。
〜左ペンダント 中右ブローチ このようなペンダントやブローチはリングへの加工が簡単です。〜
18世紀のリングは18世紀のペンダントやブローチよりも希少で人気があり高価です、そして需要があるので売りやすい為に、18世紀のペンダントやブローチにフープをつけて指輪に加工し直して18世紀の指輪として売られている場合が多くあります。例を見てみましょう。
〜ペンダントやブローチから指輪へのリフォーム例〜
この写真では美しいブルーグラスのリングに見えますね。ところが、フープ、ベゼルの裏を確認するとベゼル裏が指に合わせて湾曲しておらず平で、上下がネジで留められていることが確認できます、これは本来リングではなくブローチかペンダントからリフォームされたリングということを表しています。
この方法は一例ですが、このようにしてペンダントやブローチがリングにリフォームされている事があります。これらはリングのように見えますが、本来はリングではありませんから、正確にはフェイクリングといえるでしょう。
4-フープがオリジナルかオリジナルではないかを知る二つのポイント。
a) フープについて
フープの形が良いかどうか?ショルダーのデザインは良いかどうか?ショルダーの彫金の装飾は良いかどうか?年代に対して金の色が良いかどうか?フープに摩耗の跡があるかどうか?これらは言葉で説明してもなかなかわからないと思うので、5で詳しく解説します。
b) ベゼルとフープ部分のロウ付け
ロウ付けが古い技術と同じ方法で接着されているかどうか?例えば、レーザーを使っていた場合はモダンの接着方法ですから、その時点で気をつけた方が良いでしょう。
〜18世紀のオリジナルのロウ付けの例、シャープで綺麗な仕上がりです〜
〜現代のレーザーによる接着跡 1 完成度が低く綺麗な接着面ではありません。〜
〜現代のレーザーによる接着跡 2〜
現代のレーザーの使用以前は、ジュエラーは金だけではなくスズもロウ付けに使用していました、金よりも融点が低いので、熱によってエナメル、真珠、髪の毛、アイボリーなどにダメージを与えない為です 。スズはオリジナルリングを作る時、リペアの場合、もしくはフェイクリングを作る場合に使われています。同じスズでの接着でもオリジナルとフェイクで仕上がりに差が出ます、確認してみましょう。
〜リペア跡、フープとベゼルの間にはっきりとしたロウ付け跡が見られます、これは、19世紀にリペアされている印です。〜
〜ベゼル表が本物、ベゼル裏とフープがモダン〜
ベゼル裏とフープ、これがアンティークではなくモダンなのは明らかですね。(金の色が違いますし、ベゼルのトップと裏面の差がはっきり分かります、フープの出来も厚ぼったくてボテっとしています。)接着面がほとんど見えないようにスズでロウ付けされている例です。
基本的には18世紀の間、大抵の場合はフープとベゼルは別々に作られており、ベゼルのエナメル加工や真珠留めなどのモチーフを作る前に金でロウ付けしていた為にスズをロウ付けに使う必要はありませんでした。
しかし時々、本物のリングもスズでロウ付けされています。この場合のスズのロウ付けはほとんど見えないように処理されていて、ごく僅かな黒い線をベゼル裏面とベゼル表面の間に見る事ができるのが特徴です。このような例です。
〜全てがオリジナルの本物のリングのスズによるロウ付け、この場合はごくわずかな黒い線が見られます。〜
ですから、18世紀のリングの裏面でロウ付けの跡がごくごく細い黒線ではなかった場合、それは完成度の低いリペアかフェイクの証拠です。
5-18世紀後期のフープとショルダーの形
a) 平らなフープ
〜平らなフープの例、左がシンプルなタイプ、右が彫金が施されているタイプ〜
平らなフープは18世紀後期のもっとも通常のデザインです。特に、マーキーズシェイプリングに良く見られます。ショルダーはベゼルに向かって幅広で、つるっとシンプルなタイプか、彫金が施してあります。
〜幅広のショルダーにブラックエナメルの装飾、彫金のデコレーション〜
〜ショルダーとベゼル両方に施された美しい彫金〜
〜19世紀中期、ブラックエナメルと彫金のデコレーションのショルダー〜
b) 丸いフープ
〜フランスのカメオリング(18kイエローゴールド)イギリスのリング(9kのピンクゴールド)〜
丸いフープはより珍しく古代ローマのスタイルにインスピレーションを受けています。これはネオクラシカルスタイルとしてインタリオやカメオがセットされていることが多いです。
c) アネル フープ
〜文字が刻まれたアネルフープ〜
アネルフープとは細くて丸いごくシンプルなフープの事。これはとてもシンプルなリングで結婚指輪にインスピレーションを得ています。18世紀後期のイギリスのリングで、丸いベゼル、もしくはマーキーズシェイプのベゼルの物によく使われています。そして、フープにはよく文字が刻まれています。
d) バロックスタイルのフープ
〜左、バロックスタイルのフープ イギリス 1765年 小さなベゼルに石が留められたタイプ 右 ドイツ1765年頃〜 小さな葉のようなデコレーション〜
バロックスタイルのフープは18世紀初期の流行のスタイルです。18世紀後期にはこのスタイルはより珍しくなってきます、特に小さなベゼルに石が留められたタイプのリングの事です。大抵の場合は、ショルダーは別れたスプリットタイプか葉のような小さなデコレーションがあります。
e) スプリットショルダー
ベゼルとの設置面がいくつかに別れているスプリットショルダーはバロックスタイルに由来します。18世紀後期にはショルダーのデザインは、より幅広で印象的なものになっていっていたので、これらはフラットなショルダーよりも稀でした。スプリットショルダーには常に美しく繊細なデザインの装飾が施され、そして摩耗の跡は殆どの場合確認できます。
〜3つのスプリットショルダーの例 左 1780年頃 / 中央1790年頃 /右 1800年頃〜
〜二つのスプリットショルダーの例 よく見るとフチにごく細い線が刻まれているのがわかります。 左1800年頃 右1815年頃〜
〜モダンフェイクスプリットショルダーの例、これらは非常に簡易な作りで装飾がなく、フチの彫金もありません。〜
6-ベゼルの裏
そのリングが本物かフェイクかを知るにはベゼルの裏を見る事は興味深いものです、裏からは良い作りである事を確認しなければいけませんし、悪い接着面があるかないかも見ましょう、時々ベゼル裏には日付が彫り込まれている事がありますから、製作年代を確認することも出来ます。本物のオリジナルのリングの美しい裏面の写真を掲載しましたので良く見てくださいね。
〜イギリスのリング 1760年頃 イタリアのリング 1750年〜1775年〜
〜フランスのリング 1790年 イギリスのリング 1790年〜
〜イギリスのリング 1788年〜1791年〜
〜ドイツのリング1788年 イギリスのリング1797年〜
☆☆まとめ☆☆
このように18世紀後期のアンティークのリングには、現在に至る過程で様々な変化をしているものがあります。
アンティークのベゼルとモダンのフープ、アンティークのベゼルとアンティークのフープの組み合わせのリングには美しくて良い物もあり、完璧なオリジナルリングではありませんが、適正な価格であれば購入しても良いと思えるリングもあります。
ですが、リングがオリジナルではない場合はきちんと説明をうけた上で納得して購入が出来るのがベストだと思います。何故なら、完璧にオリジナルではない作品は価値も価格も下がりますから、それを知らずに高額でオリジナルではないリングを購入してしまった事を後に知るのはとても残念な事だからです。
18世紀のリングといってもいろいろな状態で残っている物が多いので、そういった認識を少しでも深めて頂ければ嬉しいです。
ギャラリーにて扱っている18世紀の全てオリジナルのリング
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〜ホールマーク、それはアンティークジュエリーの大切な手がかりです〜
これはジュエラーが自分のジュエラーズマークをジュエリーに打ち込んでいる写真です
ジュエリーが本物かフェイクかを知るのはとても難しいのですが、ホールマークを調べる事は真贋を知るのにとても大切な手がかりにもなり、時には証拠にもなるものです。
もちろん、ホールマークが無いからと言ってそれがすぐにフェイクの証になるわけではありません。しかし、ホールマークがないアンティークを見た時は気をつけた方が良いでしょう。例えばフェイクアールデコのプラチナ(もしくはホワイトゴールド)のジュエリーは現在南アメリカで作られており、それらにはホールマークは打ち込まれていません。
もし、アンティークジュエリーにホールマークが無かったら、
いくつかの理由が考えられます。
☆ジュエラーによってマークが打たれなかった(ジュエラーが税金を払いたくなかった)
☆ホールマークのある部分が削られた(例えば、指輪のサイズ変更時にホールマークの部分が切り取られた)
☆クラスプなどにホールマークが打ち込まれていたが、クラスプ交換の際になくなった。
☆長期間の使用によってホールマークが摩耗した(柔らかい金属の場合です、プラチナではありません)この場合には他の部分にも摩耗が見られる筈です。
☆フェイクメーカーはモダンホールマークをモダンフェイクジュエリーに打ち込みません。なぜならモダンのホールマークはモダンの作品であるという証拠になるからです。
☆そして、もっとも重要な理由はホールマーク自体が使われていなかった事です。
ホールマークは19世紀の間にヨーロッパで広く使用されるようになっていきます、19世紀初期は極めて少数のジュエリーにホールマークが打ち込まれていました。
また、モーニングジュエリーの場合には作られた年代が細かく確認できます、なぜなら亡くなった人を忍ぶモーニングジュエリーには亡くなった人の命日がしばしば刻まれているからです。
この場合にはホールマークが無くても年代の特定が出来ます。
イギリス モーニングリング 骨壺のデザイン 1782年製
イギリス モーニングリング 1783年製
素晴らしいモーニングリング 1791年製 骨壺がダイヤモンドで表現されています
ホールマークからは下記の事がわかります。
1 ジュエリーの産地
2 ジュエリーの年代
3 金属の品質
1 ジュエリーの産地
19世紀と20世紀において、それぞれの国はそれぞれのホールマークを持っていました。ですから例えばフランスのマークはイギリス、ベルギー、オーストリア、ロシア、スイスのマークとも違っていたのです。
フランスの18kのホールマーク
イギリスのホールマーク
スイスのホールマーク
☆そして、このマークには気をつけて!☆
18k もしくは 750(18キャラットゴールドのマーク)そしてPt(プラチナのマーク)これらは産地を示しません。そしてこのマークのみが打ち込まれたジュエリーがアンティークジュエリーと呼ばれていたらホールマーク無しのジュエリーと同じくらい気をつけてください。
2 ジュエリーの年代
ホールマークは19世紀と20世紀の間に大きく変わり、これがとても良い年代特定の証拠になります。
フランスでは、以下の年にマークが変わっています。
1798年、1809年、1819年、1839年、1847年、1912年(プラチナ)、1919年
1809年から1819年のホールマーク
フランスのホールマーク1819年〜1838年
フランスのホールマーク1838年〜1919年
例えば、1838年〜1919年の間に打ち込まれた特別なホールマークである<馬の頭>がジュエリーに確認できた場合、そのジュエリーが本物だと言う事が分かります。
イギリス1876年~1935年のdate letter
イギリスでは、毎年5月22日に<date letter >が変えられます。もし、イギリスのアンティークジュエリーにdate letter が打ち込まれていた場合、確実な製作年代を知る事が出来ます。
例えば、このイギリス製のリングは1899年のバーミンガムで製作された18k(750/1000)のリングであることが分かります。
オーストリアのホールマーク
3 金の品質
イギリスのホールマーク1900年頃
これらのホールマーク、左下はこのジュエリーが18k(750/1000)、左上が22k(920/1000)の高品質な金で出来ている事を示しています。そして右上のマーク、14k(585/1000)と9k(375/1000)などは他の金属が混ぜらた高品質ではない金の事を示しています。
例えば、14kというのは、全体の585/1000のみが金で出来ている事を示しています、これは金属の約半分がカッパーやシルバーなどが混ぜられているということです。
そして9kは、僅か 375/1000のみが金で出来ているということを示しています。
9k,14k.15kなどは、殆どが金で出来ておらず金以外の金属が沢山混ぜられて出来ているのです。ジュエリーを選ぶ際には物にもよりますが、18k以上の金が使われている作品を選びたいところです。18k以下だとやや低品質の印象を受けます。
イギリスの9kを示すホールマークが打ち込まれたリング。
金の色
金の色は金に他の金属が混ぜられる事によって違う色に変化します。
純金(24k=1000/1000)は常に黄色です。(暖かく深みのある色ですが、柔らかすぎます。)
18kは混ぜられる金属によって特別な色が表現できます。
イエローゴールド 750/1000純金 + 125/1000銀 +125/1000銅
ピンクゴールド 750/1000純金 + 50/1000銀 + 200/1000銅
グリーンゴールド 750/1000純金+250/1000銀
ホワイトゴールド 750/1000純金+250/1000ニッケル
品質の低い金は金属の大部分を銅が占めているので常にピンクがかっていたり、赤みがかった金の色をしています。
ホワイトゴールドは1925年からプラチナと合わせて使われ始め、1930年以降のみそのまま使われ始めます。
金に比べると、プラチナはほぼ950/1000という純度で使われています。
フランスのプラチナのホールマーク
1912年以降は金とプラチナ両方のマークが一緒に打ち込まれたアンティークジュエリーを見つける事が出来るでしょう。
19世紀後期から1920年頃まで、ジュエラーがプラチナセッティングにイエローゴールドを使い始めたからです。
そして1920年から1925年まで100%プラチナを使っています、1925年以降はホワイトゴールドとプラチナを混ぜた低価格のジュエリーを作り、さらに1930年以降は100%ホワイトゴールドのさらに低価格のジュエリーを作ります。
フランスホールマークのゴールドの鷲とプラチナの犬の頭、両方が一度に打たれています。
そして、もし金が白っぽく見えたら気をつけて下さいね。それはおそらくイエローゴールドの表面をロディウムが覆っているかもしれません、しかし、金が本当に白く見えたら、それは1925年以前には作られてはいません(ホワイトゴールドが使われ始めた年代)
まとめ
ホールマークがどれほど重要かが分かって頂ければ嬉しいです。ホールマークはそれがアンティークだという証明にもなり、製作年代、産地を示したり、金の品質も表します。
もし、アンティーク、もしくはアンティークと呼ばれているものでホールマークが無いものを見た時には気をつけた方が良いでしょう。マークが無かった場合、それがすぐにフェイクの証拠にはなりませんが、アンティークを購入される際にはホールマークについては詳しく聞いた方が良い場合があります。
アンティーク購入の際に読んで為になるアンティークレッスンです、バックナンバーも是非チェックして下さいね。
パリにてジュエリー職人の一人と、、
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