インタリオ 時を超えた小さな石に眠る広大な世界
このレッスンで紹介するインタリオは全てギャラリーにて販売した作品です。
(23年間のキャリアを持つ古代美術のエキスパートのパートナーが発見し、販売した数百点におよぶインタリオの一部も紹介します…)
インタリオにはその小ささからは想像も出来ない広大な世界が広がっています。。。
ぜひ想像して下さい、、、
遙か彼方の紀元前に、インドやアラビアの山中で、つらく困難な作業を経て砂利石の中から宝石を見つけ出した人達の事を、、、ジャスパー、カルセドニー、ロッククリスタル、カーネリアン、ニコロ、瑪瑙、ラピスラズリ、シトリン、アメジストなどの宝石を、、、
インド・アラビアから、山、川、砂漠、海を越えて地中海へと至る長く危険な旅路をした宝石達を、シリアやトルコ、アレクサンドリアの作業場で受け取る宝石研磨職人を、、、
切りだされ磨き上げられた宝石達に、信心深く裕福な人々が、自分の名前であったり、かわいい動物や偉大な神の図柄、マジックシンボル、有名人の肖像、神話などの気に入った図柄の彫刻を施す事を彫刻職人に依頼することを、、、
《小さな石に沈め彫りの彫刻を施した作品をインタリオと呼びます》
ギリシャやローマの彫刻職人が古代の道具を用いながら、膨大な時間と労力をかけて彫刻を施し、宝石を《インタリオ》と呼ばれる極小の彫刻作品へ生まれ変わらせる事を、、、
インタリオの注文主達が彫刻が施されたインタリオを持ち、彫金職人の元を訪れ、インタリオをセットする指輪の形や金の重さ、装飾などについて相談した事を、、、
ギリシャやローマに生活している、位の高い人々、貴婦人達が、ジュエリーになったインタリオと共に旅をすることを、、、
このような人々が天に召された後、インタリオは墓の中や人知れぬ場所で、あるいは池や川の底で何世紀もの間、眠り続けてきた事を、、、
長い間眠ってきたインタリオが近代人の手によって、驚きと喜びとともに発見され、この 素晴らしい芸術品が世紀を越えてあなたの元へ届いたものである事を、、、
是非、強く想像してみて下さい。
ミノスまたはミケーネ文明のバンデッドアゲート。三面に彫刻が施されています(紀元前14~ 12世紀)
インタリオ彫刻の起源は、まさに文明の開始である紀元前4千年にまで遡ります。文字の使用よりも以前にインタリオの彫刻は行われていたのです。最初期のインタリオ彫刻は貝殻や石(ステアタイト、方解石、大理石、ヘマタイト、ラピスラズリ、めのう、カルセドニー、コーネリアン)で作られ、印章として使われました。
インタリオには、幾何学模様やマジックシンボル、動物、文字(楔形文字や象形文字)、神や王、有名な人物の肖像、戦争や日常生活、神話をモチーフとした彫刻が施されました。
ステアタイトにグリフィンが彫られた古代ギリシャのインタリオ(紀元前7世紀?)
シュメール、バビロニア、エジプト、ミノス、ギリシャ、フェニキア、ペルシャ、エトルリア、ローマなど、あらゆる古代文明がインタリオのモチーフとなりました。インタリオの形状には、時代や流行によってデザインの変化が見られます。
シュメール人は円筒印章を好み、ミノス人は円盤型、両凸レンズ型、そして丸みを帯びた長方形で両端がすぼまった形を好みました。またバビロニア人やペルシャ人は円錐状の形を好みました。
エジプト人はスカラベを好み、フェニキア人やギリシャ人もスカラベを用いました。スカラベが用いられるようになったのは宝石用で、スカラベの指輪自体は紀元前2世紀初頭に作られています。
スカラベの後、ギリシャ人はスカラボイドを用いるようになります(形状はスカラベですが細部に人工的な技術を使用)。そして、スカラボイドはますます扁平・楕円状の形に変化していき、ヘレニズム期(紀元前4世紀)には通常のインタリオの形状が登場するのです。
めのうのスカラボイドにケンタウロスが彫られたギリシャのインタリオ。紀元前500年頃。
コーネリアンに兵士が彫られたイタリアのインタリオ。後期ア・グロボロ様式、紀元前3世紀
イエローカルセドニーに兎が彫られたイタリアのインタリオ。後期ア・グロボロ様式、紀元前2世紀
ローマ時代のインタリオの魅力を理解するために6つのポイントをご説明します。
1真贋について
当然ながら最も重要なポイントになります。アートマーケットでは、ギリシャ時代やローマ時代のインタリオとして非常に多くの模造品が出回っています。中には、近代(とりわけ18世紀・19世紀)に造られた模造品もあります。専門家の場合は、石質やモチーフ、制作スタイルを調べ、彫刻に使われた道具の特徴や表面の劣化やパティナを仔細に観察することで、真贋は極めて容易に判断できます。
コーネリアンに「シレノスの勝利」が彫られたイタリアのインタリオ。18世紀後期。石質と製作スタイルから、このインタリオが18世紀に作られた事がわかります、おそらく、当時の観光客向けに本物のヘレニズム期のインタリオとして売られたのだと思います。
アメジストにアレクサンドロス大王が彫られたイタリアのインタリオ、18世紀。このインタリオはヘレニズム期の作風に似ています。
2時代
より貴重なインタリオはヘレニズム期(紀元前4世紀~1世紀)およびローマ時代アウグストゥス期(紀元前1世紀後期)のものです。紀元前1世紀から紀元1世紀にかけて、ローマのインタリオは最盛期を迎えました。
紀元150年頃から、製作スタイルに変化が現れ、彫刻の質もやや下がります、また、彫刻のモチーフも変化します。特に3世紀の「マジック インタリオ」には興味深い作品がいくつかあり、初期キリスト教をテーマにした作品(3世紀~4世紀)は貴重です。
共和政ローマのバッカンテが彫られたバンデッドアゲートのインタリオ。紀元前2世紀~紀元前1世紀。
コーネリアンにヴィクトリーが彫られた後期ヘレニズム期のインタリオ。紀元前150年~100年
3保存状態
価値あるインタリオは目立った破損や欠損がなく、石灰化していません。保存状態に目立った破損や欠点などがある場合には価値が下がり、殆ど販売不可となります。ですが、コレクターの需要の見込めるような極めて希少な作品の場合は別です。
アナトリアのTycheの寺院が彫られたローマのインタリオ。
紀元3世紀。このインタリオには目立つ傷が見られましたが大変貴重な作品であった為、有名なコレクターの方にお買い上げ頂きました。
コーネリアンにPothosの姿が« vivas »の文字と共に彫られたローマのインタリオ。コーネリアンなのに何故赤くないかというと、火(あるいは酸化)によって石質が変化し、石に石灰化が起こっている為です。しかし、この石が興味深いのは、これが葬式用に製作されたものであり、火葬時に積み薪とともに焼かれたということがわかるからです。インタリオの価値としてはそれほど高くはありませんが、面白みのあるインタリオ作品として、お求めやすい価格でコレクターの方にお買い上げ頂きました。
4石の美しさ
半透明の美しいコーネリアンは、当然ながらグレーカルセドニーやオレンジ色のコーネリアンよりも貴重です。価値の低いものから並べると、ガラス、方解石、ジャスパー(赤、黄、茶)、グレーカルセドニー、オレンジ色のコーネリアン、ロッククリスタル、レッドコーネリアン、ガーネット、イエローカルセドニー、ブルーカルセドニー、めのう、アイアゲート、ニコロ、ラピス(ローマ時代のものには希少)、グリーンアゲート(緑石英)、シトリン(ローマ時代ローマ時代のものには非常に希少)、アメジスト
そして、石のサイズも重要です。小さすぎず、大きすぎずが大切になります。なぜなら小さすぎても価値が上がりにくく、大きな石の場合は彫刻作業が容易になるからです。
ニコロ アゲートに幸運のシンボル(豊饒の角、鳥、方向舵、イルカ、蝶)が彫られた インタリオ。紀元1世紀初頭。
Venus Victrixが彫られたローマのインタリオ。紀元前1世紀~紀元1世紀
アメジストにプトレマイオスが彫られたヘレニズム後期のインタリオ。紀元前1世紀初頭
5 モチーフ
インタリオには文字(名前や« vivas »など)、マジックシンボル、動物(牛、犬、馬、ライオン、ワシ)、神や人間の頭部などシンプルなモチーフ が用いられたものもあります。
女神フォルトゥナやアテナ、マーキュリー、マルス、ジュピター、« fede » (« junctio dextrarum »)などは、非常に一般的です。
立ち姿全体を表したものは、頭部のみのものより良いとされており、3つの図柄が入ったものは1つのものよりも価値があると考えられています。また、生活の情景を描いたものは単なる立ち姿の図柄のものより好ましいとされています。
他のモチーフよりも稀少であるのは、、、皇帝、ミューズ、神々(例えばバッカスがマルスよりも稀少で、ディアナはアテナよりも稀少、ヴェヌスはフォルトゥナよりも稀少)、コメディアンマスク、gryllos(グリロス)、サーカス マキシマス、田園風景の生活、ギリシャの英雄、トロイ戦争、サテュロスとニンフ、エロティックモチーフなどです。
ローマ軍船に乗ったワシが彫られたジャスパーのローマのインタリオ。紀元2世紀。素晴らしいモチーフです。
Silenus(シレノス)の仮面を被ったオウムを背負い、豊饒の角に配置されたgryllos(グリロス)のインタリオ。
非常に質の高いレッドコーネリアンが使用されています。紀元1世紀。大変素晴らしいモチーフです。
6 彫刻のクオリティ
個人的には、最も重要なポイントです。魅力的な構図、バランス、スッキリとして見やすい図柄、作りこまれたディテールなど…頭部のみのシンプルな肖像であっても、上質な彫刻が施されることで興味深い作品になります。
古代ローマ1世紀のマーキュリー ギャラリーにて販売中
一般的なマーキュリーの図柄も、良い石に特徴的な彫刻技法で制作することで、非常に魅力的なインタリオになるのです。
大きなイエローカルセドニーにセレスのアートリビュートと共に彫られたニケのインタリオ、ヘレニズム後期。(15 x 18.5 mms)
良い彫刻が施されたインタリオには、上質な石が使われている事が多いです。質の悪い石に良い彫刻が刻まれた作品を見た場合、あるいは、上質な石に質の悪い彫刻が刻まれた作品を見た場合には特に注意してください !
結論
インタリオの魅力を出来るだけ詳しくご説明いたしました、上質な石で、魅力的なモチーフと高い彫刻技術で作られた本物のインタリオを完全な保存状態で見つけることがいかに難しいことであるかを分かって頂けたらと思います。
インタリオは数千年前から存在する素晴らしい宝物と言えます。この小さなインタリオがアートマーケットの動向とあいまって非常に価値を持った素晴らしいマスターピースとなる場合があります。何故なら素晴らしいマスターピースのインタリオの価格は今後上昇傾向にあるからです。
希望の女神のインタリオ、珍しく素晴らしい題材は、最高品質の美しいプラスマに彫り込まれています。
古代ローマ 紀元前50年〜紀元50年
サイトにてご紹介予定です。
仙波亜希子 Akiko semba
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携帯電話 080-3364-3978
仏電話番号 0033(0)9 53 53 51 47
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ゴルゴネイオン
古代ギリシャにおいて、最も人気のあったシンボルのひとつが、蛇の髪を持つ不気味な女性の頭の象徴、ゴルゴネイオンです(メデューサ3姉妹をモチーフにした装飾、メデューサの仮面などは「ゴルゴネイオン」と呼ばれていました)。これまでに発見されたゴルゴネイオンのメダリオンやオーナメントの起源は、紀元前8世紀にまでさかのぼります。
ギリシャのゴルゴネイオン、紀元前6世紀
ギリシャのゴルゴネイオン、紀元前5世紀
ギリシャ神話によると、メデューサの頭を見た者は石に変えられ、ペルセウスとメデューサの物語にゴルゴネイオンの登場が描かれています。
メデューサを殺すペルセウス、紀元前6世紀
ゴルゴネイオンは、寺院や建物、あるいは墓を悪から守るものとして、非常に早い時期(紀元前8世紀ほど前)から、ギリシャで流行していました。そしてヘレニズム期にはインタリオやカメオに彫られ、持ち主を危害から守るお守りとして使われるようになったのです。
このモチーフの起源はギリシャですが、ヘレニズム文化と共に広まっていきました。ゴルゴネイオン像は、イタリア・エトルリア都市国家群の地中海沿岸地域で発見された寺院、衣服、彫像、食器、武器、鎧、硬貨にも描かれています。
ギリシャの銀貨に彫られたゴルゴネイオン、ネアポリス(紀元前400~350年)
エトルリアのゴルゴネイオン、紀元前4世紀
ヘレニズム文化がローマに組み込まれていくにつれ、ゴルゴネイオン像の人気はさらに高まりました。もっとも、ゴルゴネイオンの顔立ちは次第に美しいものへと変化しています。恐ろしく残忍なメデューサの仮面は、美しく哀れなメデューサ・ロンダニーニに変えられていったのです。。。
ヘレニズム時代後期またはローマ時代初期 «メデューサ・ロンダニーニ »
http://en.wikipedia.org/wiki/Medusa_Rondanini
ヘレニズム寺院アポロ像、ディディム、トルコ
裕福なローマ家庭においてゴルゴネイオンは、家を悪から守るものとして通常玄関横に描かれていました。蛇で取り巻かれた顔が、しばしば壁画に描かれているほか、モザイクとしても床に埋め込まれています。
ローマ時代のゴルゴネイオン・モザイク、1世紀
ローマ時代のゴルゴネイオン・モザイク、2世紀
ローマ時代のより品質の高い装飾品は、(1~2世紀)始めのものです。通常の大きさは縦11~24mmでした。より大きなものは、31mmになります。
現在ギャラリーで扱っている 古代ローマ2世紀 ゴルゴネイオンのカメオ
このカメオの大きさは24.4mmあり、最も大きいサイズのひとつです!
3世紀から4世紀の間にはより簡略化され、通常サイズはより小さくなっています(10~18mm)
ローマ時代のゴルゴネイオン・カメオ、1世紀(ギャラリーにて販売済)
ローマ時代のゴルゴネイオン・カメオ、1~2世紀
ローマ時代のゴルゴネイオン・カメオ、2世紀
ローマ時代のゴルゴネイオン・カメオ、3世紀(ギャラリーにて販売済)
仙波亜希子 Akiko semba
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久しぶりのブログ更新となってしまいました〜、すみません!
パリを離れてあちこち回っていたり、古代ローマフェアの準備やらなにやらの慌ただしい暑苦しさをお見せしても、、と思っているうちにブログをご無沙汰してしまいました(^^; 少し落ち着いてきたらもう少しマメに更新できるようにしたいです。。。
今日は、前々からとても楽しみにしていた古代エトルリア展に行ってきました!エトルリアは古代地中海世界でもとてもユニークな存在ですよね、エジプトやフェニキア、ギリシャ、ローマなどの国々の繋がりを作品からも感じました。
展示数はそれほど多くはなかったのですが、作品が発する目を釘付けにするパワーや、エトルリア人の素晴らしい芸術的感性、興味深い生活の様子などを丁度良いボリュームで紹介していて、とてもリラックスして楽しむ事が出来ました。
写真があまり撮影できませんしたが、美術館の展示の一部をカタログ写真と合わせて掲載しますのでご覧下さい(^-^)
仙波亜希子 Akiko semba
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アンティークレッスン 詩情あふれる古代エトルリアのスカラベの世界
最高品質のエトルリアのスカラベ、 前480 – 450年 (メトロポリタン美術館)
エトルリア文明は謎と詩情に満ちています。エトルリア美術は古代世界において最も美しいものの一つで、この民族の起源には様々な説があります。
エトルリア文明は中央イタリアで紀元前750年ごろから発展し始めました。この絢爛なる文明の最盛期は紀元前600年と350年の間です。
ローマ人はエトルリアの征服を紀元前311年に始まった戦争の間に開始し、エトルリア人最後の都市はローマにより紀元前265年に征服されたました。この年こそエトルリア文明の最後の年です。
コーネリアンで出来たスカラベはこの歴史の流れを追います。最良の作品は紀元前4、5世紀以降のものになります。また、エトルリアのスカラベは、« archaïc »、 « free»、 « transitionnal »という名で知られる様式に分類されます。
“a globolo”様式は前4世紀末に始まる様式です。前3世紀における”a globolo”様式の作品はチャーミングでユニークな様式ですが、エトルリア末期のものになります。
エトルリアスカラベの素材は暗赤色のカーネリアンが殆どです、形も常にスカラベ型で、彫刻部分以外の品質はほぼ均質ですから、意図的に均一にしているように思われます、(例えばギリシアのカーネリアンは様々な色合いを持ち、また使用される石の種類も多いです。)
スカラベの背面の表現はギリシアのものよりも細工が丁寧で、特に盛り上がった縁の模様が美しく仕上げられています。また背面にカメオなどのレリーフが付いているものもあります。スカラベは宝石として扱われる場合が多く、精巧な金のフレームがが付くこともしばしばあります。
サテュロスの彫られたギリシア製スカラベ、 前5世紀初頭 (大英博物館)
I – ギリシアの影響を受けたArchaïc 様式 (前6 – 5世紀)
堅い宝石にスカラベの彫刻を施すことは、エトルリアでは紀元前6世紀の後半に始まりました。これはギリシアのアルカイック様式の彫刻から影響を受けたもので、おそらくギリシア人芸術家の手によるものと思われます。
この様式のニュアンスからは、ギリシア世界のなかでも最も初期に出現したイオニアの彫刻家が示唆されます。題材はギリシアに従うことも多いのですが、ある種の題材が特に好まれるということもあり、ギリシアで扱われていたのと必ずしも、あるいは決して、同様に扱われるわけではありません。ギリシア神話の図像はエトルリア人にすぐ受け入れられましたが、いつでも完全に理解されているわけではなく、また少し違った物語が伝わっていることもあります。
そして、エトルリアの題材のみを純粋に反映していると思われるものは殆ど存在していないようです。
Archaïc 様式、前6世紀
Archaïc 様式、前6世紀末
II – ギリシアから派生したエトルリア様式、« Free 様式» 前5-4世紀
前5世紀終わりにかけての様式はギリシアに近い様式ですが変化が見られます。最も優れた作品はどんなギリシア産のものにも劣らず、特に« free 様式»における英雄の肉体的特徴を捉えた解剖学的研究は非常に優れています。前4世紀に« free 様式»は最盛期を迎え、もっと自然な表現である« transitional 様式 »も始まりを告げます。
« free » 様式で彫刻されたアスリート、 前480 – 450年
free様式で彫刻された英雄、前 450年
« free 様式»で彫刻された戦士、前5世紀
美しい題材: « free style »で彫刻されたヒュプノス、前4世紀初頭
III – もっと自然で、エトルリア特有の題材も目立つようになった« Transitional 様式 » 、前4世紀
« transitional 様式 »で彫刻された戦士(上)とサテュロス(下)、前4世紀
IV – « A globolo » 様式、前4世紀末 –前3世紀
前350年以降、« a globolo 様式»が始まります。これは図像を主にドリルで描き、小球の集まりで表現するものです。この様式はすぐに広まり、動物の形態の研究に伴いさらに簡略化されてゆきます。
初期の« a globolo »様式、 場面は周囲がギザギザ模様で縁取られています。
まず 黒い丸で囲ったような丸形をドリルで描き、他の部分を彫ってゆきます。前4世紀末
題材もまた前350年以降に変化します 、英雄や神話の場面は用いられなくなり、そのかわりに、空想上の生物 (キメラ、グリフィン、ケンタウロス、サテュロス) や、曲芸師、動物などが描かれました。
初期の« a globolo »様式、場面はギザギザ模様で縁取られています。前4世紀末
前3世紀に典型的な« A globolo »様式。デザインは非常に単純であり、縁もギザギザ模様ではなく細い線だけです.前3世紀
« a globolo »様式で彫刻された曲芸師、 前3世紀 (ギャラリーにて販売)
« a globolo »様式で彫刻された動物、前3世紀 (クリスティーズ、2007年12月)
« a globolo »様式で彫刻されたケンタウロス、前3世紀 (大英博物館)
V – ギャラリーソレイユでご紹介しているエトルリア製スカラベ付きリング
稀少なエトルリアスカラベの中でも最も品質の高い作品をご紹介致します。スカラベが高品質だけではなく、リングも含めて全てオリジナルです、ほとんどのエトルリアスカラベはオリジナルリングが失われている為にこれは極めて珍しいことです。
古代エトルリア コーネリアンスカラベ オリジナルリング« 泉のヘラクレス » « free 様式 »、前4世紀
古代エトルリア コーネリアンスカラベ オリジナルリング «古代の 射手 » «transitional 様式 »、前4世紀
高品質で、インタリオもスカラベもすべてオリジナルの素晴らしい作品です(^-^)
仙波亜希子 Akiko semba
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アンティークレッスン 古代ジュエリー 偽物と本物
どちらも古代ローマ2世紀の品であると言われていた作品です。
一つは完全な本物でもう一つは年代のミスがあり、また一部偽物です・・・どちらが本物でしょうか?
私の最も信頼できる古代美術のパートナーは14歳のときからフランスでインタリオの収集を始めました。歴史学者(フランス国立古文書学校)であり宝石学者(宝石学研究所)でもあるパートナーは、古代彫刻と古代の指輪の専門家になって23年になりますが、インターネットの普及に伴い、偽物が簡単に確認できるようになってきていることを残念に思っています。近年では知識や証明無しに古代美術が販売されています、例えば誰でも出品可能なオークションEbayですら、古代美術のディーラーとして偽物の古代インタリオ、偽物の古代カメオが販売されていたりするからです。
AD100年のローマインタリオと言われています。本物か偽物、どちらでしょうか?
これらは古代ローマのリングと言われています。本物か偽物、どちらでしょうか?
古代ジュエリーに純粋な夢を求める愛好家が、安くはないお金を支払い、« 秘蔵の品 »と呼ばれる作品を購入しますが、この« 秘蔵の品 »が価値の無いつまらない偽物ではないということを確認する方法が、愛好家には無いのが現実です。この事をとても悲しく思っています。。。
例えば、この近代の偽物の指輪は3世紀の年代の品と言われ、
ebayで1万1,000ドルで販売されていました。
この作品を購入した人が、いつか古代のジュエリーを購入しようと貯めたお金で、
この作品を購入していたとしたらどれだけの悲しさでしょう。
もう一つのよくある問題は、古代ジュエリーの記述が誤っていることです。品は本物であるけれども、知識不足から記述、石の名称、金の品質、あるいはもっとひどくて品物の年代が誤っていることがあります。。。
細工の年代判定は比較的難しくはありません。ただ、型がとてもシンプルなら模倣するのもとても容易だということでもあります。
では、例えば、この指輪はどの年代でしょうか?
インタリオの年代は古代ローマ2世紀ですから、古代ローマ2世紀でしょうか?
実はこの指輪は1890年に、古代のインタリオを使ってジュエラールイ・ヴィエズによって制作されたものです!
ただ、これはルイヴィエズの古代ジュエリーへの憧れが作品として昇華したものですから、面白みがあり、ルイヴィエズ作だと言う事が分かっていて購入するのなら、何の問題もありません。
インタリオの年代判定はゴールドの指輪の年代判定よりもより困難です。インタリオの年代判定に関する間違いは非常に多く見られます。
例えば、、、インタリオが古代ローマ時代の品はギリシアもしくはヘレニズムの作品ということになっていたり・・・古代ローマ3世紀の品は古代ローマ1世紀になり、・・・ササン朝の品は古代ローマ後期と言われ・・・ルネサンス朝、19世紀もしくは近代の品ですら古代ローマと言われています・・・!
石の名称に関する誤りもあります、レッドジャスパーはコーネリアンとなり・・・レッドコーネリアンはガーネットになり・・・グリーンアゲートはエメラルドになるのです・・・!
古代ジュエリーや古代彫刻を知る、購入するには本物の専門家を見つける事が実に重要です。かなり多くの偽物が出回っていてそれらを見分ける方法が、専門家以外には分からないからです。
こうしてアンティークレッスンでいろいろな事をお話する目的は、古代ジュエリーを愛する人たちの夢を守り、本物の価値ある品をきちんと購入して頂くことです!
このレッスンで、本物の専門家が持つ知識の一部と、どのように鑑定し偽物を見つけ出しているかを少しご説明します。これらの方法の一部は、アンティークマーケットの日常の作品対象としてはあまりにも高額で、博物館研究所で使用されているものです。しかし古代の品の信憑性を鑑定することが本物の専門家以外には困難であるということを感じて頂けると思います。また、これらをお話してもフェイクメーカーが対策をすることは不可能ですから問題はありません。
専門家で無ければ判定はとても難しく、ほぼ不可能と言えます。
I.古代の技法と宝石の起源をたどる研究を通して鑑定・・・
ルーペと双眼顕微鏡の検査・・
第一段階は、10から30倍の無色のルーペ、Bresser Researcher ICD (x 40 x 80)の単体物双眼顕微鏡を使用して各宝石や対象品を念入りに観察します。この観察により以下のことが分かります:
- ジュエリーの制作に使用された過程や手順の識別(キャスト、ハンマーでたたく、装飾[彫刻、彫版・・・]、構造要素[各部分の異なる部品])
- 構造要素および装飾要素の方法: 半田付け、曲げ加工、リベット打ち
- 装飾要素、材料の追加なし:レポゼ、打出し模様、彫刻、刻印、オープンワーク・・・また材料の追加有り:ワイヤー、粒子、貴石、溶融ガラス、エナメル、珊瑚、真珠など。
.
表面の分析:半田付け、制作に使用した工具の形跡、カット、レタッチ、装飾の取り付けや仕上げなど・・・
痕跡学 目に見えるものを辿って分析することから制作に使用された工具を識別する科学的専門分野。金細工師、宝石細工職人や彫刻師が装飾、カッティングや部品の成型に使用した工具の形、大きさや種類を定義することに努めています。これにより工具が仮定する時代に適応しない工具の場合、偽物であることを見つけることが出来ます。古代に行われた修理、近代(特に19世紀、20世紀)の修復、手入れ、石の交換の発見および識別をします。
模倣作品や鍛造の識別。摩損、青錆(自然発生か人工的か)の兆候・・・対象品の青錆が論理的で順当に摩耗過程をたどっているかを確認する分析。この変化はフェイクメーカーには真似出来ません。
博物館研究所における科学的研究
1 – SEM.
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して検査します。この検査では顕微鏡写真術も一緒に使用されます。
2 – 放射線透過写真 X線.
対象品の内部構造のためにX線検査も行われます。この方法により内部の状態や想像もしなかったような秘密がわかるだけでなく、上手く隠された修復部分も見えます。
3 -蛍光X
金の組成成分の分析です。ジュエリー制作に使用されている金の原産地と起源は、付着物の特性を示した痕跡の分析に基づいて判定しています。
金に関連する一部の要素(鉛やオスミウムなど)は、金が発見された場所の特性から同位体比です。
蛍光X線は、標本の化学成分の判定や、亜鉛やコバルトなどの近代物質の存在を確かめるのに使用されます。(シンクロトロン放射光蛍光X線分析法:SR- XRF)
金の組成は完璧には立証されていないことを覚えておいて下さい。近代の模造品の制作者は古代ゴールド(たとえば、摩耗した古代硬貨から収集した金)を使って偽物の宝石を作ることが出来ます・・・
II . 文書および肖像の分析:
古代ジュエリーを実際に手に取り細部を確認する事に加えて、以下のような古代ジュエリーの資料や肖像を平行して確認していく事もとても大切です。
また、フランスの公的なコレクション(ルーブル美術館、ガロ・ロマン文化博物館、リヨン美術館 フルヴィエール、サン・ジェルマン・アン・レーの国立考古学博物館 、パリの 国立図書館メダル陳列室、ニームの考古学博物館、ディジョンの考古学博物館、ナントの博物館など)、外国では(エジプト考古学博物館、アレクサンドリア国立博物館、大英博物館、アシュモリアン博物館、オックスフォード、メトロポリタン美術館、ニューヨークのブルックリン美術館、ライン州立博物館ボン)などで、作品を見る事も大切です。
フランスのブザンソンで発見された秘蔵の品、1世紀
または、現存する様々な芸術品、古代資源文学、彫刻、粘土、絵画、硬貨などから学ぶ事も大切です。
本物の古代ローマの指輪、3世紀
類型的で様式的な分析も大切になります。例えば、これは古代ローマ3世紀の指輪です。何故これが古代ローマ3世紀の作品であると言えるのかは、この独特の形をした指輪が古代ローマ3世紀のコイン等と共に出土をした考古学的背景から、この作品が古代ローマ3世紀といえるのです。これは作品の年代判定を行うのにおいて必ず必要な段階の一つです。
手に取り、作品の技法、様式が、肖像と一致しているかを平行して確かめる事も不可欠です。
これらの全ては、いつの日も、古代ジュエリーへの純粋な夢を守り、壊さないようにする事が目的です。
本物の素晴らしい宝物: サン・ドニのメロヴィング朝のリング!夢がつまっています(^-^)(M.A .N)
仙波亜希子 Akiko semba
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