修道院のクリソベリル


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パリで25年ディーラーを続けていた方が引退された後のお店に、新しいディーラーさんがギャラリーを開きました。

このディーラーさんには以前、それはそれは素晴らしい18世紀のクリソベリルのペンデロークをご紹介して頂いたことがあります。ペンデロークとは、縦長のずっしりとしたボリュームのあるピアスのこと、貴族が夜会で身につけた特別な作品です。

A-Pair-of-Chrysoberyl-Ear-Pendants-and-Ring-Portugal-Late-Eighteenth-Century-Photo-courtesy-of-Siegelson

ペンデロークとは、このようなデザインの縦長のずっ〜しりとしたピアス。

このクリソベリルは私の大好きな石の一つで、独特の雰囲気と淡い黄緑色のなんとも言えない色に魅力を感じます。クリソベリルはポルトガルのアンティークジュエリーに多く見られるので、ポルトガルのアンティーク、と聞くだけで、もしかしてクリソベリル?!と期待してしまう程です。

何故ポルトガルでクリソベリルのジュエリーが多く作られたのかですが、それは、隣国のスペインは美しいエメラルドを豊富に手に入れることが出来た為に、エメラルドを使った華麗なジュエリーが作られましたが、ポルトガルはエメラルドを多く使うことができなかったので、エメラルドに代わるような美しい石を探したところ、ブラジルで淡い黄緑の石を発見し、ギリシャ語で金を意味するクリソスを使って、石の名前をクリソベリルと名付け、ジュエリーに使ったからです。

クリソベリルは、エメラルドに比べて高価ではなかった為に、カッティングを研究することが出来たのも、このクリソベリルを使ったジュエリーを面白くさせている理由の一つでしょう。クリソベリルのジュエリーからは石の魅力を引き出す為のカッティングの工夫が見られます。

このクリソベリルのジュエリーは後の時代に修道院で発見されることが多かったのですが、それは、当時の女性は夫の死後に修道院に入ることが多く、その際に、持っていたジュエリーを修道院に預けたからなのです。

個人的にクリソベリルは18世紀の大降りなデザインのジュエリーに使われていると、石の美しさを最大限に発揮しているような気がします(モダンジュエリーにクリソベリルがセットされていると、若干寂しい印象に見えてしまいます。)

18世紀の夜会で貴婦人が身につけたジュエリーは希少ですし、オリジナルのコンディションで残っていることも稀ですから、良い作品は通常高価になる場合が殆どです。でも、好きな石なので出会いを待ってしまいます。

ちなみに上の写真はセーヌ川の橋を渡っている時に撮影しました、セーヌ川を渡っている時に見る空には、雲が大きなキャンバスに描かれているようで、絵画のような雰囲気がとても美しいのです。

 

仙波亜希子 Akiko semba

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