古代のコインから読み取れるカメオのモチーフ


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美しい19世紀のストーンカメオ、装飾品に特徴があります。ちりばめられた真珠の髪飾り、ネックレス、そして三つ叉にわかれた耳飾りを身に着けています。この三つ叉に別れた特徴的な耳飾りと同じ耳飾りを着けた女性の古代のコインがエルミタージュ美術館所に所蔵されています。

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ペルセポネのドラクマ銀貨 エウアイネトス作 紀元前413年〜400年 シチリア シラトゥーズ エルミタージュ美術館所蔵

このコインです。ギリシャコインの中で最も大きなもののひとつであるこのシラクサのドラクマ銀貨には、女神デメテルの娘であり、冥界の神ハデスの妃であるペルセポネが刻まれています。カメオと同じデザインのイヤリングを身に着けている事から、このカメオがペルセポネをモチーフにした事がわかります。ペルセポネは小麦の穂で作った花冠を飾った豊かな髪を持つ若い女性として描かれ、 耳はその豊かな髪に隠されています。これは、ペルセポネが冥界にいる間は地上に豊穣はないということを表現しているのです。またシチリアのオルティージャ島付近に多数生息していたイルカも描かれています。

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ペルセポネ 1874年 Dante Gabriel Rossetti   テードギャラリーロンドン

 古代のコインはその都市に関連する神や神話をモチーフに選ぶ事が多いですが、シチリアのコインにもペルセポネだけではなく他のモチーフとも関連があるようです。

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このコインはシラクサの守護妖精であるアレトゥーズの肖像が特徴的な古代シラクサ硬貨の一つ、ペルセポネの硬貨とほぼ同じデザインです。

アレトゥーサは、アルテミスと同一視される場合があり、また先に紹介したコインのようにペルセポネと同一視される場合もあります。彼女の肖像にも多くの場合、古代にはオルティージャ島付近に多数生息していたイルカが描かれています。

アレトゥーズとはオリンピアの近くで戯れていた水の精の事、川の神アルペイオスが彼女に恋をして追いかけていました。アレトゥーズは月と狩猟の女神であり、また女性の純潔を守る女神でもあるアルテミス (ローマ神話ではディアーナ) に助けを懇願しました。アルテミスは彼女の姿をシラクサにあるシチリアのオルティージャ島の地下から湧き出す泉の流れに変えました。アルペイオスは臆せずアレトゥーズを追って川を地下に流し込んだため、二人の水の流れは永遠に混ざり合い、オルティージャ島にあるアレトゥーサの泉になっているのです。

このデザインの硬貨は、古代ギリシャの貨幣としては最も美しいものの一つでしょう。紀元前5世紀初頭のアルカイック様式から同世紀末のキモンやエウアイネトスの代表作にいたるその急速な発展は、その期間におけるギリシャ文明の急速な発達と軌を一にしているのです。

 

 

Parisのアンティークディーラー 仙波亜希子 Akiko semba

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