アンティークレッスン 古代ジュエリー 偽物と本物
- 2013年12月19日
- アンティークレッスン
アンティークレッスン 古代ジュエリー 偽物と本物
どちらも古代ローマ2世紀の品であると言われていた作品です。
一つは完全な本物でもう一つは年代のミスがあり、また一部偽物です・・・どちらが本物でしょうか?
私の最も信頼できる古代美術のパートナーは14歳のときからフランスでインタリオの収集を始めました。歴史学者(フランス国立古文書学校)であり宝石学者(宝石学研究所)でもあるパートナーは、古代彫刻と古代の指輪の専門家になって23年になりますが、インターネットの普及に伴い、偽物が簡単に確認できるようになってきていることを残念に思っています。近年では知識や証明無しに古代美術が販売されています、例えば誰でも出品可能なオークションEbayですら、古代美術のディーラーとして偽物の古代インタリオ、偽物の古代カメオが販売されていたりするからです。
AD100年のローマインタリオと言われています。本物か偽物、どちらでしょうか?
これらは古代ローマのリングと言われています。本物か偽物、どちらでしょうか?
古代ジュエリーに純粋な夢を求める愛好家が、安くはないお金を支払い、« 秘蔵の品 »と呼ばれる作品を購入しますが、この« 秘蔵の品 »が価値の無いつまらない偽物ではないということを確認する方法が、愛好家には無いのが現実です。この事をとても悲しく思っています。。。
例えば、この近代の偽物の指輪は3世紀の年代の品と言われ、
ebayで1万1,000ドルで販売されていました。
この作品を購入した人が、いつか古代のジュエリーを購入しようと貯めたお金で、
この作品を購入していたとしたらどれだけの悲しさでしょう。
もう一つのよくある問題は、古代ジュエリーの記述が誤っていることです。品は本物であるけれども、知識不足から記述、石の名称、金の品質、あるいはもっとひどくて品物の年代が誤っていることがあります。。。
細工の年代判定は比較的難しくはありません。ただ、型がとてもシンプルなら模倣するのもとても容易だということでもあります。
では、例えば、この指輪はどの年代でしょうか?
インタリオの年代は古代ローマ2世紀ですから、古代ローマ2世紀でしょうか?
実はこの指輪は1890年に、古代のインタリオを使ってジュエラールイ・ヴィエズによって制作されたものです!
ただ、これはルイヴィエズの古代ジュエリーへの憧れが作品として昇華したものですから、面白みがあり、ルイヴィエズ作だと言う事が分かっていて購入するのなら、何の問題もありません。
インタリオの年代判定はゴールドの指輪の年代判定よりもより困難です。インタリオの年代判定に関する間違いは非常に多く見られます。
例えば、、、インタリオが古代ローマ時代の品はギリシアもしくはヘレニズムの作品ということになっていたり・・・古代ローマ3世紀の品は古代ローマ1世紀になり、・・・ササン朝の品は古代ローマ後期と言われ・・・ルネサンス朝、19世紀もしくは近代の品ですら古代ローマと言われています・・・!
石の名称に関する誤りもあります、レッドジャスパーはコーネリアンとなり・・・レッドコーネリアンはガーネットになり・・・グリーンアゲートはエメラルドになるのです・・・!
古代ジュエリーや古代彫刻を知る、購入するには本物の専門家を見つける事が実に重要です。かなり多くの偽物が出回っていてそれらを見分ける方法が、専門家以外には分からないからです。
こうしてアンティークレッスンでいろいろな事をお話する目的は、古代ジュエリーを愛する人たちの夢を守り、本物の価値ある品をきちんと購入して頂くことです!
このレッスンで、本物の専門家が持つ知識の一部と、どのように鑑定し偽物を見つけ出しているかを少しご説明します。これらの方法の一部は、アンティークマーケットの日常の作品対象としてはあまりにも高額で、博物館研究所で使用されているものです。しかし古代の品の信憑性を鑑定することが本物の専門家以外には困難であるということを感じて頂けると思います。また、これらをお話してもフェイクメーカーが対策をすることは不可能ですから問題はありません。
専門家で無ければ判定はとても難しく、ほぼ不可能と言えます。
I.古代の技法と宝石の起源をたどる研究を通して鑑定・・・
ルーペと双眼顕微鏡の検査・・
第一段階は、10から30倍の無色のルーペ、Bresser Researcher ICD (x 40 x 80)の単体物双眼顕微鏡を使用して各宝石や対象品を念入りに観察します。この観察により以下のことが分かります:
- ジュエリーの制作に使用された過程や手順の識別(キャスト、ハンマーでたたく、装飾[彫刻、彫版・・・]、構造要素[各部分の異なる部品])
- 構造要素および装飾要素の方法: 半田付け、曲げ加工、リベット打ち
- 装飾要素、材料の追加なし:レポゼ、打出し模様、彫刻、刻印、オープンワーク・・・また材料の追加有り:ワイヤー、粒子、貴石、溶融ガラス、エナメル、珊瑚、真珠など。
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表面の分析:半田付け、制作に使用した工具の形跡、カット、レタッチ、装飾の取り付けや仕上げなど・・・
痕跡学 目に見えるものを辿って分析することから制作に使用された工具を識別する科学的専門分野。金細工師、宝石細工職人や彫刻師が装飾、カッティングや部品の成型に使用した工具の形、大きさや種類を定義することに努めています。これにより工具が仮定する時代に適応しない工具の場合、偽物であることを見つけることが出来ます。古代に行われた修理、近代(特に19世紀、20世紀)の修復、手入れ、石の交換の発見および識別をします。
模倣作品や鍛造の識別。摩損、青錆(自然発生か人工的か)の兆候・・・対象品の青錆が論理的で順当に摩耗過程をたどっているかを確認する分析。この変化はフェイクメーカーには真似出来ません。
博物館研究所における科学的研究
1 – SEM.
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して検査します。この検査では顕微鏡写真術も一緒に使用されます。
2 – 放射線透過写真 X線.
対象品の内部構造のためにX線検査も行われます。この方法により内部の状態や想像もしなかったような秘密がわかるだけでなく、上手く隠された修復部分も見えます。
3 -蛍光X
金の組成成分の分析です。ジュエリー制作に使用されている金の原産地と起源は、付着物の特性を示した痕跡の分析に基づいて判定しています。
金に関連する一部の要素(鉛やオスミウムなど)は、金が発見された場所の特性から同位体比です。
蛍光X線は、標本の化学成分の判定や、亜鉛やコバルトなどの近代物質の存在を確かめるのに使用されます。(シンクロトロン放射光蛍光X線分析法:SR- XRF)
金の組成は完璧には立証されていないことを覚えておいて下さい。近代の模造品の制作者は古代ゴールド(たとえば、摩耗した古代硬貨から収集した金)を使って偽物の宝石を作ることが出来ます・・・
II . 文書および肖像の分析:
古代ジュエリーを実際に手に取り細部を確認する事に加えて、以下のような古代ジュエリーの資料や肖像を平行して確認していく事もとても大切です。
また、フランスの公的なコレクション(ルーブル美術館、ガロ・ロマン文化博物館、リヨン美術館 フルヴィエール、サン・ジェルマン・アン・レーの国立考古学博物館 、パリの 国立図書館メダル陳列室、ニームの考古学博物館、ディジョンの考古学博物館、ナントの博物館など)、外国では(エジプト考古学博物館、アレクサンドリア国立博物館、大英博物館、アシュモリアン博物館、オックスフォード、メトロポリタン美術館、ニューヨークのブルックリン美術館、ライン州立博物館ボン)などで、作品を見る事も大切です。
フランスのブザンソンで発見された秘蔵の品、1世紀
または、現存する様々な芸術品、古代資源文学、彫刻、粘土、絵画、硬貨などから学ぶ事も大切です。
本物の古代ローマの指輪、3世紀
類型的で様式的な分析も大切になります。例えば、これは古代ローマ3世紀の指輪です。何故これが古代ローマ3世紀の作品であると言えるのかは、この独特の形をした指輪が古代ローマ3世紀のコイン等と共に出土をした考古学的背景から、この作品が古代ローマ3世紀といえるのです。これは作品の年代判定を行うのにおいて必ず必要な段階の一つです。
手に取り、作品の技法、様式が、肖像と一致しているかを平行して確かめる事も不可欠です。
これらの全ては、いつの日も、古代ジュエリーへの純粋な夢を守り、壊さないようにする事が目的です。
本物の素晴らしい宝物: サン・ドニのメロヴィング朝のリング!夢がつまっています(^-^)(M.A .N)
仙波亜希子 Akiko semba
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